こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、稀代の時代小説作家、隆慶一郎さんの短編集「柳生刺客状」を紹介します。
■あらすじ
関ヶ原で徳川家康は死んでいた…。
決戦を前に急遽、采配を振るうことになったのは、影武者の世良田二郎三郎…。
その最大の秘事を偶然にも知ることとなった柳生宗矩は、二代将軍秀忠にその事実をを伝えます。
高らかに笑う秀忠。このときから、宗矩は秀忠の影の腹心となります。
狙うは、二郎三郎の命。
秀忠・裏柳生と二郎三郎が演じる家康とのし烈な戦いが始まったのでした…。
代表作「影武者徳川家康」の外伝ともいうべき表題作のほか、筆者最後の短編などを収録した短編集。
収録作品は次の通りです。
・柳生刺客状
・張りの吉原
・狼の目
・銚子湊慕情(書きおろし長編冒頭部)
・死出の雪
■柳生刺客状
隆慶一郎さんは、館長ふゆきが大好きな作家のひとりです。
代表作には、「影武者徳川家康」や「吉原御免状」、「一夢庵風流記」などがあります。
「柳生刺客状」は、その代表作「影武者徳川家康」を宿敵・柳生宗矩の目から見た外伝ともいうべき作品。
宗矩がいかにして秀忠の腹心となり、裏柳生と呼ばれる暗殺剣を磨くことになったかが描かれます。
この作品だけでも十分に楽しめますが、「影武者徳川家康」を読破してから読むと、面白さ倍増です。
物語のクライマックスは、宗矩が秀忠の命により、秀忠の兄・秀康の暗殺をはかろうとする場面。
宗矩が秀康にとどめを刺そうとした瞬間、目の前に現れたのは、甥の柳生兵介。後の柳生兵庫之介利厳でした。
2人の間には、決して解けることのない深い因縁が…。果たして、2人の対決の行方は?
■張りの吉原
「張りの吉原」も、代表作「吉原御免状」の系譜を継ぐ作品と言えます。
「吉原御免状」は、吉原誕生の秘密を記した「神君御免状」をめぐる、若き剣豪・松永誠一郎と裏柳生との戦いを描いた伝奇小説でした。
そういえば、この作品でも柳生宗矩が登場してたな…。
「張りの吉原」も、舞台は吉原。しかも「吉原御免状」で登場した庄司甚右衛門の裔(すえ)にあたる人物も登場します。
ただ、ストーリーは剣豪ものではありません。
主人公は、大阪遊里の元太夫、花扇。
彼女が、東西女くらべでうたわれる「吉原の張り」を探りに、吉原に押しかけるところから物語は始まります。
世の男たちは、なぜ吉原に魅かれるのか。
花扇は、吉原で人気の太夫の番頭新造(いわゆるマネージャー)として働きながら、その理由を探ります。
見どころは、剣術どころか、吉原の舞台裏。だからお色気シーンもあります。
そして花扇は、「吉原の張り」の真実に行きつきます。果たして、吉原の唯一無二の「張り」とは…?
他にも、「狼の目」や「死出の雪」など、筆者得意の剣豪を描いた短編も迫力たっぷり。
「銚子湊慕情」は、書下ろし作品の冒頭30枚を掲載したもの。筆者の急逝により未完となったのはとても残念です。
ありがとう、柳生刺客状! ありがとう、隆慶一郎さん!