「夏子の酒」前日譚…祖母・奈津の半生を描く「奈津の蔵」

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、名作「夏子の酒」の前日譚、夏子の祖母・奈津の半生を描く「奈津の蔵」です。

■あらすじ

昭和3年、奈津は18歳の若さで、蔵元・佐伯酒造に嫁いできます。
夫・善造と愛を育んでいきますが、蔵の厳しいしきたりや義母・義娘との難しい関係に苦悩します…。

そんな中、奈津はふとしたことで蔵の中に入ってしまったことから、酒造りに興味を持ち始めます。
しかし、当時のしきたりでは、蔵は女人禁制。絶対に足を踏み入れてはならない場所でした…。

当主の義父から厳しくられた奈津ですが、蔵の香りを忘れることができません
善造は、そんな奈津の情熱と醪を嗅ぎ分ける優れた嗅覚があることに気づきます。そして、奈津に「吟醸酒をつくりたい」という秘めた夢を明かすのでした…。

やがて近づいてくる戦争の足音…。善造にも召集の通知が届きます
果たして、奈津と善造の運命は…?奈津は、夢の吟醸酒をつくることができるのか…?


奈津の蔵(1)

■奈津の蔵

名作「夏子の酒」の前日譚を描く「奈津の蔵」。尾瀬あきらさんの作品です。
昭和初期を生きた、夏子の祖母・奈津を主人公に、その半生を描きます。

物語は、夏子が祖母・奈津の話を聞きたいと、ゆかりのひとを訪れるシーンで始まります。
夏子という名前は、祖母・奈津から譲り受けたもの。夏子が10歳のときに祖母は他界しています。

そして、少しずつ明かされていく奈津の物語
それは、順風満帆なものではありませんでした。むしろ、悲しみや苦しみの多い人生かもしれません。
ただ、それでも奈津は懸命に生きました。そして「ほんの少し喜びもあった。愛もあった」
ゆかりの女中は言葉をつなぎます。「だから奈津さまはけっして不幸ではありませんでした」。

夏子は、名前だけでなく、奈津の魂をも受け継いだのではないでしょうか。
奈津がいなければ「夏子の酒」は生まれていなかった…。親から子へ、子から孫へ、思いがつながっていく。「夏子の酒」の原点ともいえる作品、「奈津の蔵」です。


奈津の蔵(2)

■名言・名シーン

それでは、そんな「奈津の蔵」から、個人的にグッと来た名言・名シーンを紹介しましょう。
※ネタバレになる記述がありますので、ご留意ください。

「女に穢れなどない」

不意のこととはいえ、蔵の中に入った奈津に対して、当主の義父は怒りを露にします。
それは古くからの蔵のしきたり、女人禁制を破ったからでした。
「蔵は女人禁制と昔から決まっておる。穢れが入ることは許されねえ」。

その言葉に対して違和感を覚える奈津。それは夫の善造もそうでした。
「女は子を産む。…わたしは尊敬の念すら覚える。女に穢れなどない…」
奈津はその言葉に、抑えていた感情を解き放ち、号泣するのでした…。


奈津の蔵(3)

「親から子へ、子から孫へ…。それが蔵だ」

奈津は、善造との間に子供を授かります。
浩男。この男児こそ夏子の父親になる、後の佐伯酒造の当主でした。

善造は、奈津に女性解放を主張する平塚らいてうの本を手渡すとともに、浩男を蔵に連れていって冒頭の言葉をかけたのでした。
後のことを思えば、それは善造の魂のメッセージだったのかもしれませんね…。


奈津の蔵(4)

「私はいつもそばにいて見守っている」

やがて日本は太平洋戦争に突入。善造も召集され戦地に駆り出されます
懸命に蔵を守る奈津のもとに、軍服を着た一人の兵隊が訪れます。

「佐伯善造少尉は…勇猛果敢なる戦闘の末、戦死なされました」。
産まれたばかりの乳児を抱え、茫然自失とする奈津…。

失意の奈津のもとに一通の手紙が届きます
それは、善造が亡くなる日の朝、同僚に託した一通の手紙でした。

奈津、この手紙は私にもしものことがあったらお前に手渡してくれと金井に頼んだものだ
だからこれをお前が読む時、私はこの世にいない

そんな悲痛な書き出しから始まる手紙には、奈津への感謝や子供への願いが…。
そして最後に、奈津への思いが記されていました…。

奈津、お前を心からいとおしく思っている
私はいつも、おまえのそばにいて見守っている…

他にも名言、名シーンはたくさんあります。
何しろ、夏子の生き写しのような奈津ばあちゃん(逆か…)。どんなことがあっても挫けることなく、佐伯酒造と子供たちに尽くしました…。

最終話で、ときは現代に戻り、夏子の出産シーンをむかえます
そして、生まれた子どもに夏子が名付けた名前とは…?感動の場面が盛り沢山、「奈津の蔵」。おススメです。

ありがとう、奈津の蔵! がんばって、夏子!

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