宮城谷昌光「介子推」 清々しくも悲しい英雄の物語

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、宮城谷昌光さんの描く古代中国の時代小説「介子推」(かいしすい)を紹介します。

■あらすじ

中国のとある里山で。秘かに士官の夢を抱く青年・介推(かいすい)
彼は、愚直に鍛錬を重ねて棒術を磨き、里を悩ます人食い虎を倒しました。

やがて彼は友人から、故国を追われ流浪の旅を続ける晋の公子・重耳の噂を聞きます。
その臣下・先軫と出会うと、彼は引き付けられるように、重耳のもとに仕官しました。

介推は、重耳一行のために、献身的な働きを重ねます。
ときには、飢餓に陥った一行のために、身体にむち打って食べものを求めました。


介子推

その重耳のもとに、最凶の刺客が送り込まれます。その名は閹楚(えんそ)
閹楚の刃が重耳に迫る…。その都度、介推は卓越した棒術で閹楚を退け、重耳の命を救いました

しかしながら、暗殺者の刃はどんなときも闇のなか…。
そんな介推の働きは、重耳の目に触れることはありませんでした

やがて重耳が覇業を達成したとき、陰の立役者である介推の姿はありませんでした…。
後に人々から神として敬愛された悲運の英雄・介推。彼はいかに生き、いかに死んだのか…。

■介子推

古代中国を舞台にした物語を得意とする時代小説家、宮城谷昌光さん
その出世作にして代表作のひとつが、小説「重耳」(ちょうじ)です。

重耳は、中国の春秋時代に燦然と輝く名君。
ただ、彼の人生は波乱万丈で、君主になったのは62歳の時。それまで19年にも及ぶ亡命生活をしていました。

その重耳を影ながら支えたのが、名もなき臣下の介推(かいすい)
後に、中国全土から敬愛を集めて、「介子推」(かいしすい)と崇められる若者です。

小説「重耳」でも、逃避行の旅の途中から臣下に加わると、圧巻の存在感を見せました。
やっぱり、その最大の魅力は、達人レベルの棒術です。


重耳(下)

「重耳」の中盤のハイライト、刺客・閹楚との壮絶な死闘は、本作「介子推」でも大きな見どころです。
何しろ、この閹楚の不気味さと暗殺剣の鋭さが尋常ではありません。
それを介推は、達人レベルの棒術で撃退します。それも、人知れず…。

これが後の悲劇を生むんですね。
この介推、その性格は一言で言うと、清廉潔癖。介推の隠れた活躍もあって、重耳が晋の王として帰国しようとしたとき、重臣が恩賞をせびる姿を見て、彼は一行を去ります。

この辺りは、とってもじれったくて切ない。
重耳はやがて、介推の功績を知って恩賞を与えようとしますが、すでに彼は山に隠棲していました。
どれほど重耳が彼を求めようとも、介推は二度と姿を現すことはありませんでした…

大切なものを失ってはじめて気づくこと、ありますよね…。
重耳はこの山を「介山」と名付け、二度と過ちを繰り返さぬように、「我が過ちを銘記し、善人を表彰する」と宣言しました。

清々しくも、悲しい英雄の物語。
宮城谷昌光さんの名作「重耳」のスピンオフ・ストーリー「介子推」、おススメです。

ありがとう、介子推! ありがとう、宮城谷昌光さん!

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