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館長のふゆきです。
今日の夢中は、今村翔吾さんが描く「羽州ぼろ鳶組」シリーズ9作目。
羽州ぼろ鳶組「双風神」!源吾と星十郎そして大坂火消らは緋鼬を食い止めることができるのか…です。
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■あらすじ
京の淀藩常火消・野条弾馬は、その惨状にわが目を疑います。
炎の旋風「緋鼬」(あかいたち)が大坂の町を蹂躙…。それは、まるで生き物のように町を焼き尽くし、火消しの命をも奪っていました。
続発する緋鼬に人為的なものを感じ取った弾馬は、新庄藩火消頭取・松永源吾に協力を依頼します。
源吾は、天文学者でもある風読みの加持星十郎らを連れ大坂へ向かいます。しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは、想像を絶する光景でした…。

「下手すると大坂は壊滅する」。脅威を増す緋鼬を前に、源吾は大阪の火消たちに協力を呼びかけますが…。
一方、星十郎は天文学と風読みの知識を持って、緋鼬の謎を解き明かそうと思索をめぐらします。そして、彼はある男の元を訪れるのですが…。
果たして、源吾らは緋鼬の猛威を食い止めることができるのか。
やがて見えてくる事件の真相、そして陰で糸を引く者の姿…。火消たちは大阪の町を救うことができるのか…。
■獄舎での対話
直木賞作家・今村翔吾さんが、江戸の火消たちの活躍を描く「羽州ぼろ鳶組」シリーズ。
9作目となる本作「双風神」(ふたつふうじん)は、ぼろ鳶組の頭脳、風読み・加持星十郎に大きく焦点を当てたストーリーです。
これまで、源吾らが数々の難題に直面したとき、豊富な知識と冷静な分析力で解決に導いてきた星十郎。
しかし、その星十郎が「無理です」と絶望するほどの緋鼬の脅威…。この緋鼬の圧倒的な破壊力が、本作の読みどころの一つです。
「緋鼬」(あかいたち)という名前そのまま、まるで意志を持った生き物のように、この炎の旋風は人と町を飲み込んでいきます。
はじめて相対した源吾が、一時は死を覚悟するほどの猛火。こんなもの止められるのか…。それは、あやうく一命を取りとめた源吾までが絶望を感じるほどの「天魔の領域の炎」でした。

(写真はイメージです/写真ACより)
それでも、江戸で最も諦めの悪い火消…それが、ぼろ鳶組です。源吾はもちろん、星十郎も諦めませんでした。
物語の終盤、星十郎はかつて智謀で完敗した男のことを思い出します。彼なら緋鼬の謎を解き明かすことができるかもしれない…。その男は六角獄舎にいました。
そして、分厚い木の格子越しに交わされる、星十郎と罪人との会話。それは、映画「羊たちの沈黙」のクラリスとレクター博士さながらです。
「大坂の件だな」。まるで星十郎が来ることを予見していたように語りだす男…。そして、謎かけのような対話の果てに、その男は緋鼬を止める手がかりを口にするのです…。
■火消の熱い絆
そしてもう一人、諦めの悪い男が動き出します。一度は緋鼬に惨敗した松永源吾。
緋鼬を止めるには、普段はいがみ合っている大坂の町火消の結集が必須。そこで、源吾は一案を練って大博打に打って出ます。
詳細は省きますが、このシーンが爽快かつ胸アツです。源吾が、大阪の町火消に大喧嘩を売るのです。
「黙れ、大坂の糞火消ども」「俺は緋鼬を止めるために来た。何故だかわかるか?…てめえらが情けねえからだろうが」。四方八方から源吾に罵詈雑言が浴びせられます。
それでも源吾は言葉を止めません。それは、源吾も彼らもみな、同じ火消だから…。
「俺は余所者だ。てめえらの確執なんざ、これっぽちも解らねえ…だがよ、てめえら大坂の町が無茶苦茶にされて悔しくねえのか?」
火消ならだれもがグサッとくる言葉。さらに魂を奮い立たせる言葉をつなぎます。「大坂はお前らが守ってきたんだろうが!」。

(イラストはイメージです/イラストACより)
そしてむかえる、緋鼬との最終決戦。はたして、星十郎は風を読むことができるのか。
反目し続けてきた大坂の町火消たちは力を結集することができるのか。そして源吾は緋鼬を止めることができるのか…。
大迫力の大坂決戦!羽州ぼろ鳶組シリーズ第9作「双風神」。その結末はぜひ本書を手に取ってご覧ください。
今日の夢中は、羽州ぼろ鳶組「双風神」!源吾と星十郎そして大坂火消らは緋鼬を食い止めることができるのか…でした。
ありがとう、羽州ぼろ鳶組! ありがとう、「双風神」!