7人の武将が発する"幸村を討て"!真田幸村の謎に迫る…今村翔吾「幸村を討て」

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館長のふゆきです。

今日の夢中は、7人の武将が発する"幸村を討て"!真田幸村の謎に迫る…今村翔吾「幸村を討て」です。
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■あらすじ

ときは大坂の陣…。圧倒的な兵力を持って、ついに豊臣家を滅ぼさんとする徳川家康。
その野望の前に、敢然と立ち塞がった武将がいました。その名は、真田幸村

そのときまで全く無名の武将が、大阪の陣に参戦すると後世に勇名を馳せる戦いぶりを見せます。
特に大坂夏の陣では、家康本陣に突撃すると、家康を死の恐怖に震わせるほど追い込みました。

戦場ではじめて相対峙する2人、家康と幸村。家康「防げ!」、幸村「覚悟!」。
家康に向って槍を放つ幸村、死を覚悟して目を瞑る家康。しかし、幸村の槍は家康を外れ、地に突き刺さりました。

家康が幸村のほうへ視線を走らせると、幸村は赤い甲冑の中に白く光る歯を覗かせ、爽快な笑みを浮かべていました。
「何だと…」。茫然とする家康を尻目に馬首を転じて退いた幸村は、後に通りがかった家康方の兵に易々と討ち取られました。

わざと外したのだ…。そうとしか思えない。だが何のために…。
大坂の陣が終わり天下が定まると、家康は幸村の謎を解きにかかります。目星をつけたのは6人。
果たして幸村は何者か。幸村の狙いは何か。家康を含めて7人の追想から明かされていく真相とは…。

■「幸村を討て」

いやぁ…最高に面白い時代小説でした。「幸村を討て」。作者は、直木賞作家の今村翔吾さん。
大阪の陣を題材にして、そこで後世に名を馳せた真田幸村の戦いぶりと人物像に迫っていきます。

徳川家康を含めて7人の武将たちの回想から幸村の実像に迫っていく、ミステリー仕立てのストーリー展開。
この構成は、石田三成を主人公にした「八本目の槍」と同様。今村さんの得意なパターンですね。グイグイと物語に引き込まれていきます。

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章ごとに登場する7人の武将とは、徳川家康、織田有楽斎、南条元忠、後藤又兵衛、伊達政宗、毛利勝永、真田信之
この7人いずれもが、「幸村を討て」と口にします。ある者は戦場で、ある者は城内で、またある者は…。

個人的には、南条元忠の章「南条の影」毛利勝永の章「勝永の誓い」が好き。
南条元忠は、大阪冬の陣で豊臣方に与するも、徳川への内通を疑われ自刃した武将。あまり知られていない武将ですが、だからこそ今村さんの手にかかると、魅力的な武将に生まれ変わります

特に南条が優秀な忍びを抱えていたという設定は絶妙。忍びといえば真田も…ということで、忍び同士の対決が見どころの一つです。
クライマックスは、真田丸の攻防の影で繰り広げられる忍び同士の戦いと追い詰められる元忠。果たして元忠の運命は?わずかに見えてきた真田の狙いとは…。

■そして最後に…

続いて毛利勝永ですが、こちらも幸村に比べれば知名度の低い武将。ただ、史実でも幸村と共に、最後まで奮戦しました。
勝永もあまり知られていないが故に、今村さんの発想によって、幸村に引けを取らない魅力的な人物に描かれます。

勝永は、ただ一人の、たった一つの大昔の約束を果たすために、大阪の陣に駆け付けました。
それは主君秀頼ではなく、その傍らに座る人…淀殿。勝永が幼い頃に淀殿に近侍していたという設定が、これまた絶妙です。史実でも毛利家は秀吉の代からの忠臣、無いことではありません。

物語は、勝永と淀殿の過去と現在とを行き来しながら進んでいきます。それはまた、史実と創作が重なり合って行き来するようで、その展開に思わず感情移入してしまいます。
そして迎える最後の場面。戦場から馬首を転じて大坂城に向かう勝永。そこには秀頼と、そして淀殿がいました。逃げようという勝永に対して、淀殿が言った最後の言葉とは…。

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この勝永の章は、それまでの伏線の回収のような役割を担っているので、感動と同時に謎解きの重要な役割を果たしています。
ただ、ここで終わらないのがこの小説の面白さであり、直木賞作家・今村翔吾さんの面目躍如といったところ。

最後に登場するのが、幸村の兄、真田信之です。信之は、関ヶ原で幸村と袂を分かち東軍に参じ、いまは徳川配下にありました。
その信之が、家康に呼び出され、その面前で幸村の謎を問いかけられるのです。果たして、家康がたどり着いた謎の答えとは。明かされる幸村の狙いとは。そして、最後に信之もまた口にする「幸村を討て」…その真意とは。

再び言いますが、最高に面白い時代小説でした。真田ファンはもちろん、歴史ファン、ミステリーファンも引き込まれること間違いなしです。
今日の夢中は、7人の武将が発する"幸村を討て"!真田幸村の謎に迫る…今村翔吾「幸村を討て」でした。

ありがとう、今村翔吾さん! ありがとう、「幸村を討て」!

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