和田竜「村上海賊の娘」 女海賊王参上!ど迫力の海上決戦を刮目せよ

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、和田竜「村上海賊の娘」 女海賊王参上!ど迫力の海上決戦を刮目せよ…です。
「夢中図書館 読書館」は、小説や雑誌などの感想や読みどころを綴る読書ブログです。あなたもお気に入りの一冊を見つけてみませんか?

■あらすじ

ときは戦国時代
乱世に武勇を轟かせた海賊がいました。その名は「村上海賊」

最強の水軍を擁して、瀬戸内海に覇を唱える当主の村上武吉
彼の剛勇と荒々しさを引き継いだのは、娘の景(きょう)でした…。


村上海賊の娘(一)

海賊働きに明け暮れる景は、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女。
その景が、自ら助けた農民らを送り届ける船旅に出たことから、物語は急転直下を告げます。

向かったのは難波海。織田信長と石山本願寺が対峙する合戦前夜の海でした…。
景の到着を待っていたかのように合戦の火ぶたが切り落とされます。門徒と織田軍の壮絶な戦い。そしてついに村上海軍が動きます

世に言う「木津川合戦」
村上海賊の娘・景姫が戦場に出たとき、歴史の波が大きくうねりを上げました…。

■村上海賊の娘

「村上海賊の娘」(むらかみかいぞくのむすめ)。
「のぼうの城」などでお馴染みの人気小説家・和田竜さんによる長編歴史小説です。
和田さんはこの作品で、本屋大賞と吉川英治文学新人賞をダブル受賞しました。

単行本では上下2巻、文庫本では全4巻の大作ですが、これが読み始めたらあっという間。
作品の世界にどっぷり没入して、時を忘れるほど読み耽ってしまいました。さすが本屋大賞、とんでもなく面白い…。


村上海賊の娘(二)

クライマックスで描かれるのは、天正4年(1576年)の第一次木津川合戦。毛利氏と織田氏との間で起こった海戦です。
戦国時代を描く小説は数多くあれど、この合戦をとり上げたものは多くありません。
戦いの舞台は海の上、果敢に突撃するのは海賊の娘…。予測不能な展開に、頁をめくる手が止まりませんでした。

著者の和田さんは、子供の頃に広島に住んでいて、村上海賊の拠点であった因島を訪れたことがあるそうです。
そこから村上海賊のことを描きたいと構想をあたため、ついにこの作品でその夢を実現しました。

「さすが和田さん!」と感嘆するのは、主人公に村上景という女性を抜擢したこと。
村上武吉や嫡男・元吉を主人公にするアイデアもあったそうですが、史書「萩藩譜録」の中に実の娘が記されていることに着目。
そこから妄想をふくらませて、史実をベースにしながらも型破りなストーリーをつくり上げました。

■魅力たっぷりの登場人物たち

この村上景をはじめとした魅力的な登場人物たちが、この作品を彩り豊かなものにしています。
主だったキャラクターを紹介するとこんな感じ。

まずは、物語の主軸を担う村上海賊
主人公の村上景は、男勝りで破天荒。数々のトラブルを引き起こしますが、その一途な思いが男たちの戦を動かしていくのです…。
その父にして能島村上家の当主が村上武吉。村上海賊を最盛期に導いた武将です。
景の兄・元吉は怜悧な智将。景の弟・景親は逃げ足の速い臆病者。この2人も景に影響され成長していきます。
さらに、来島村上家の重臣・吉継、因島村上家の当主・吉充は、村上海賊の飛車角のような猛将ぶりを見せました。


村上海賊の娘(三)

その村上海賊を味方に引き入れようと画策する毛利軍
毛利元就の三男・小早川隆景は天下人も認める頭脳の持ち主。
その重臣・乃美宗勝は毛利水軍の古参。毛利水軍の将・児玉就英は景に惚れられる美丈夫。
宗勝は主君・隆景の秘策を携えて戦場に向かいますが、景の予想外の行動によって翻弄されることになります…。

そして、毛利家と一大決戦を交える織田軍。海戦を指揮するのが泉州(真鍋)海賊です。
その若き当主が真鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)。剛強無双の巨漢。景とは浅からぬ因縁を持って木津川合戦を迎えますが…。
父・道夢斎は真鍋家躍進の立役者。さらに沼間義清松浦安太夫寺田又右衛門ら、一癖も二癖もある泉州侍が躍動します。
織田信長も登場。シーンは僅かながらも圧倒的な存在感で物語を引き締めました。

他にも、本願寺の門主・顕如や側近・下間頼龍、雑賀党を率いる鈴木孫市なども登場。
門徒の源爺留吉は、景の運命を大きく左右することになりました…。

■ど迫力の海上決戦

もう一つ、この作品の魅力となっているのが、ど迫力の海上決戦です。

「合戦を書きたくて歴史小説を書いている」という和田さん。
この作品も半分が合戦シーンで占められています。なかでも焦眉なのが、物語のハイライトとなる木津川合戦。
難波の海の上で繰り広げられる、村上海賊と泉州海賊の戦い。海賊同士がしのぎを削ります。

大型の旗艦・安宅船や、一回り小さい戦艦・関船、さらに小型で機動力あふれる小早。
これらが連携して敵の船に「乗っ取り」を仕掛けていく様は、これまでの歴史小説では見たことのないど迫力の合戦絵巻です。


村上海賊の娘(四)

この合戦シーンの見せ方も和田さんが上手い…。カットが変わるごとに主役が変わるんですね。
あるシーンで景の目線で戦闘が描かれたと思うと、次のシーンでは襲い掛かる七五三兵衛が、さらに次には追い詰められる景親が…といった展開。

目まぐるしく変わる海上の攻防はスリル満点です。息をつかせぬ展開で戦いは終盤へ。
ついに対峙する七五三兵衛と景…。最終決戦は火の手が上がる船の上。果たして勝敗の行方は…?

歴史に残る毛利軍と織田軍の対決、木津川合戦。和田竜版「木津川合戦」で、戦いの帰趨を握ったのは一人の女海賊でした。
スぺクタルあふれる海上決戦…映像化も期待したいど迫力の歴史小説「村上海賊の娘」でした。

ありがとう、「村上海賊の娘」! ありがとう、和田竜さん!

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