青崎有吾「体育館の殺人」!アニメオタクの天才高校生・裏染天馬が密室殺人に挑む

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、”平成のエラリー・クイーン”と呼ばれる青崎有吾著の学園ミステリー「体育館の殺人」です。

■第22回鮎川哲也賞受賞作

「平成のエラリー・クイーン」と称される青崎有吾氏
その鮮烈なデビューを飾った作品が、第22回鮎川哲也賞を受賞した「体育館の殺人」です。


体育館の殺人/青崎有吾

鮎川哲也賞とは、東京創元社が主催する公募の新人文学賞です。
「創意と情熱溢れる鮮烈な推理長編を募集します」と銘打ち、世に眠る才知あふれるミステリー作家の卵を発掘しています。

■あらすじ

雨の降る日の放課後、風ヶ丘高校の体育館で、放送部の部長が刺殺されるという事件が発生します。

現場は密室状態の体育館。そこにいた唯一の女子卓球部部長に容疑がかかります。
卓球部員の柚乃は、部長を救うために、学内一の天才と呼ばれる裏染天馬に真相の解明を依頼しますが…。

その天才は、校内の一室に住みつくアニメオタクの駄目人間だった…。
稀代の変わり者名探偵・裏染天馬とその助手?柚乃が挑む真相とは?

■密室殺人

まさに「創意と情熱溢れる鮮烈な推理小説」の名に相応しい、スリルとエンターテイメント満載の本格ミステリーです。

魅力の一つは、「密室殺人」という古典的ながらも、ミステリの醍醐味ともいえる殺人事件の謎解き。
ここでそのトリックを解説するのは止めておきますが、さすがは「平成のエラリー・クイーン」。現場に残された手がかりから、論理的に犯罪が組み立てられています。

最終章の前に、「幕間ー読者への挑戦」という章を立てて、作者は読者に挑戦状を突きつけます。

全ての手がかりは、第一章の出だしから第四章末尾までの間に、あからさまな形で記してある。飛躍した発想も必要ない。読者諸兄が手がかりの一つ一つをごく当たり前に分析し、論理的に考えていけば、自ずと答えは導き出されるはずだ。

…などとミステリ好きの読者を煽ります。
この辺りは、学生時代にミステリ研究会に所属していたという青崎氏の面目躍如、古典ミステリーへのオマージュなのでしょうね。
すいませんが、私はまったく答えに行き着けませんでした…。

■名探偵登場

いま一つの魅力は、第二章から登場する、学園一の天才にしてこの物語のシャーロック・ホームズ、「裏染天馬」のキャラクター

その登場シーンからして斬新です。この物語のワトソン役といえる袴田柚乃が天馬の住みつく校内の部屋を訪れるのですが…。

待ち受けていたのは、二十人ほどの少女たちだった。
「・・・・・・・・・・」
アニメのポスターだ。柚乃の上半身に引けを取らぬくらいの特大サイズが、何枚も壁一面に貼られている。

なるほど…。アニメオタクにして半分引きこもり生活の駄目人間を登場させる辺りは、さすがは「平成の」エラリークイーン。今どき(?)ですね。

そんな彼を校内の一室から引っ張り出したのは、事件解決への義侠心や柚乃への恋心なんてのでは全くなく、報酬として提示された10万円ってのも笑いました。
しかもその使途は怪しげなアニメグッズ…。

ただ、ストーリーが進むにつ入れて、読者はこの裏染天馬の一挙手一投足から目が離せなくなります。
そして最終章で容疑者全員を集めて行なわれる、「体育館の殺人」の謎ときシーンでは…。

「しかしそれも、もう終わりです。先ほどようやく結論が出せました。僕は犯人の正体を知っています。犯人は、皆さんの中にいます」

容疑者は約20人。彼らを前に天馬が語る、驚くべき事件の真相とは…

■裏染天馬シリーズ

青崎有吾氏は、この作品のあとも、裏染天馬を主人公とした作品を相次ぎ刊行しています。
「水族館の殺人」「図書館の殺人」「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」…。


水族館の殺人/青崎有吾

駄目人間・裏染天馬がどんな名推理をするのか。がぜん興味を引かれているところです。
あと、ちょっぴり期待するのは柚乃との関係。天馬がリアルな世界で恋愛を成就できるのか…。頼むよ、天馬!

ありがとう、「体育館の殺人」!ありがとう、天馬&柚乃!

 

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