こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、万城目学さんの短編集「ホルモー六景」の中から、「鴨川(小)ホルモー」をとり上げます。
■あらすじ
古都京都を舞台に、小さなオニを操って戦う競技「ホルモー」。
京都に所在する4つの大学のサークルがしのぎを削っています。
その中でも圧倒的な強さを誇る、京都産業大学玄武組。
「黒い嵐」とも号されるこのチームの中心は、「二人静」(ににんしずか)と呼ばれる2人の女学生でした。
定子と彰子…。玄武組の新歓コンパで出会った2人はたちまち意気投合。
プライベートでも常に行動する仲となると、その以心伝心ぶりをホルモーでもいかんなく発揮。他チームを圧倒しました。
しかし、ある日突然、2人の仲を分かつある事件が発生します。
やがてそれは、定子と彰子による1対1の決闘を呼ぶことになるのです…。
雨の降りしきる中、鴨川のほとりで繰り広げられるオニとオニの戦い。
通称「鴨川(小)ホルモー」。果たして戦いの行方は…?2人の戦いのきっかけとなった事件とは…。
■鴨川ホルモー
万城目学さんのデビュー作「鴨川ホルモー」。
京都の大学生たちが、小さなオニを操って戦う奇妙奇天烈な競技「ホルモー」…。
そのホルモーを通じて主人公らが成長していく姿を描く青春ファンタジー小説。
万城目ワールドの原点として燦然と輝く傑作です。
そのスピンオフとなる短編集が「ホルモー六景」です。
「六景」のネーミング通り、6編の短編が収録されています。
今日とり上げるのは、その中の一編、「鴨川(小)ホルモー」。
京都産業大学玄武組の強さの原動力となっている「二人静」、定子と彰子を描くショートストーリーです。
■定子と彰子
この定子と彰子ですが、短編で終わらせるには惜しいほど、キャラ立ちしています。
この2人は、玄武組の新歓コンパで運命的な出会いを果たすと、いにしえの「管鮑の交わり」を引き合いに出されるほどの強い絆を築きます。
彼女たちを強固に結びつける絆、それは世の男たちへの怒りでした…。
その経緯が前半で語られるのですが、これがユーモラスで含蓄があるんですよねぇ。この辺りも万城目ワールドの魅力です。
その怒りが生まれるきっかけとなったのは、大学に入学して訪れた新歓コンパの嵐でした。
女子高や田舎の学校で高校時代を過ごした2人は、彼氏歴ゼロ。でも、大学に入ったら彼氏ができるだろうと思っていました。
しかし、そんな彼女たちに春は訪れませんでした。万城目さんが竹を割ったように記します。
端的に言おう。つまり、彼氏などできなかったのである。
たとえば、彰子は新歓コンパで、愛想笑いや親しげな振る舞いができませんでした。気高くしてシャイ…。
必要もなく笑顔を振りまき、とことんきゃぴきゃぴする行為に、パンツ一丁で往来を歩くような気恥しさを覚えた。
一方の定子はモテました…。コンパで男たちが言い寄って来ますが、その行動が一々気に障りました。彼女は注文の多い女でした…。
たくさんのくじ引き券をもらえど、結果はすべてポケット・ティッシュというようなものだった。
■鴨川(小)ホルモー
その2人が世の男たちへの怒りをぶつけるように、ホルモーでオニを撃破していきます。
そうなんです。彼女たちはオニたちを男に見立て、それがばたばた倒れ消えていく様を見て、大いにエキサイトしたのです。
しかし、そんな2人の絆を分かつ出来事が発生します。
定子が、ある男性と恋に落ちたのです…。しかも、彼女の誕生日にデートすると言うのです。
実は2人は、世の中のありとあらゆる記念日にいつも2人で過ごすことを誓っていました。
打ち明けられた彰子は、祝福すべきと分かりながらも、定子に告げます。
決闘を、しましょう。
やがて訪れる決闘の日。それは、定子の初デートの日でもありました…。
定子と彼氏が連れ立ってやって来た鴨川のほとりで、その火ぶたは切って落とされます。
長きにわたるホルモーの歴史上、誰もその存在を知らない「鴨川(小)ホルモー」。
あまりにも切ない2人の戦い。果たして、戦いの行方は…。恋の行方は…。2人の絆はどうなるのか…。
その結末は…。こちらはぜひ、本編をお読みください。
万城目学さんが描く短編小説「鴨川(小)ホルモー」。おススメです。
ありがとう、鴨川(小)ホルモー! ありがとう、万城目学さん!