こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、浦沢直樹さんのルーヴル美術館とのコラボによる新作「夢印」を紹介します。
■ルーヴル×漫画
浦沢直樹さんの新作は、なんとルーヴル美術館とのコラボでした。
なんでも、浦沢さんがルーヴル美術館から執筆依頼を受けたのは、4年前のことだったそう。
ルーヴルは、漫画を、建築、彫刻、絵画、音楽、文学(詩)、演劇、映画、メディア芸術につぐ「第9の芸術」と位置付けています。
そこで、浦沢さんにルーヴル×漫画の共同プロジェクトを持ち掛けて、ようやく実現したのが、この「夢印」です。
ただ、そこは浦沢直樹さん。「第9の芸術」としてではなく「日本漫画」として描くこととしました。
浦沢さんといえば、手塚治虫氏の鉄腕アトムのリメイク作品「PLUTO」でも、ひとひねりもふたひねりも趣向を凝らしていましたもんね。
今回は、なんと赤塚不二夫氏が生み出した、あの出っ歯のキャラクターが登場します。
それが、「おそ松くん」などに登場する「イヤミ」。
そうかぁ、フランスが舞台だもんね。「おフランス帰り」を自称する彼が登場するのは当然…?。
それにしても、赤塚作品へのオマージュを、ルーヴルとのコラボでやっちゃうあたり、さすがだなぁ、浦沢さん。
■あらすじ
あらすじは、こんな感じ。
ある一つの家族。ある一枚の絵。ある一人の謎の男。
騙されて多大な借金を負った父と娘が、謎のカラスに導かれて訪れた古い館。
看板には「仏研」と書かれてあります。
館内を奥に進むと、そこには蝶ネクタイで出っ歯な男が。
「夢を見る人にしか、ルーヴルから美術品を拝借した話なんて、してあげないざんす」。
そこから始まる、嘘かまことか、とある美術品にかかわるサスペンスに満ちた物語。
そして、舞台はフランス、ルーヴルへ…。
果たして、親子は、そして出っ歯の男は、「夢」をかなえられるのか?
■日本漫画
1巻完結という小作品なのですが、浦沢さんらしい仕掛けがたっぷり。
過去と現在、日本とフランス、そして登場人物たちが、いつの間にかつながっていきます。
この辺は、浦沢さんのオハコですよね。
「20世紀少年」でも「MONSTER」でも、いくつも伏線を敷いたストーリー展開が取られていました。
登場人物も、主人公の少女かすみをはじめ、魅力的なキャラクターぞろいです。
物語の鍵を握る出っ歯の男も、最初は違和感アリアリですが、そのうちに彼でなくては出せない不思議な存在感を醸し出します。
自由、馬鹿馬鹿しさ、美しさ…。そんな「日本漫画」の魅力を、浦沢さんは出したかったのだそうです。
それはきっと、ルーヴルそしてフランス人に伝わったのではないでしょうか。
そして、この作品を読んだ私たち日本人も、あらためてその魅力に気づきました。やっぱり、「日本漫画」っていいよね。
ありがとう、「夢印」! ありがとう、ルーヴル&浦沢直樹さん!