こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、万城目学さんの新作「パーマネント神喜劇(しんきげき)」です。
■万城目学
万城目学さんは、当夢中図書館でも幾度か取り上げている、大好きな作家の一人です。
代表作には、「鴨川ホルモー」や「鹿男あをによし」、「プリンセス・トヨトミ」なんかがありますね。
万城目ワールドとも言われる、神とか鬼とか、人知を超えた存在が登場する物語。
その万城目ワールドを楽しめる新作。その名も「パーマネント神喜劇(しんきげき)」。
今回は、この新作を紹介します。もちろん、ネタバレない範囲でね。
■パーマネント神喜劇
「パーマネント神喜劇」は、とある神社に宿る神様の"お仕事"を描く物語。
オムニバス形式で全4話で構成されています。
え?お仕事って何かって?
それはね、あなた、決まってるじゃない。
この神社のご利益が何か。知ってるでしょう?
そうそう、恋愛成就。縁結びですよ、縁結び。
あっ、2回言っちゃった…。ほら、言霊が飛び出ちゃった…。
…という具合に、神様が一人芝居のように語りだすところから物語がはじまります。
※前述の語りはふゆき作。ホンモノはもっと味わい深くて面白いのでご安心を。
■あらすじ
そんな親しげな語りではじまる全4話。それぞれが縁結びにかかわりのある、小粋なショートストーリーに仕上がっています。ネタバレのない範囲で、それぞれ簡単に紹介しましょう。
第1話「はじめの一歩」。
「まず、はじめに」が口癖の主人公・肇は、石橋を叩いても渡らない超慎重派。恋も同じで、付き合って5年も経つのにまったく進展なし。
業を煮やしたみさきは、「まず、はじめに」という口癖を直すように通告しますが…。
この話し、TVドラマ「世にも奇妙な物語」のために書かれた短編みたいです。
神様を伊藤四朗、肇を大野智が演じたというから、ちょっと興味を引かれますね。
さてさて、この2人を神様はどうやって結びつけるのでしょうか?
第2話「当たり屋」。
当たり屋で生計を稼ぐ、どうしようもない男、英二。
とある事情で、この男のもとに、願いがかなう言霊が7つ送られることに。恋人凜子も見放すなか、大もうけを企む「当たり屋」英二が最後にとった行動とは…。
第3話「トシ&シュン」。
作家志望のトシと女優志望のシュン。それぞれが夢に挫折しつつあるとき、あるきっかけで、この神社が2人の命運を握ることになります。
トシとシュン、それぞれの決断が下されるとき、縁結びの神様は果たして…?
第4話「パーマネント神喜劇」。
表題作となったこの物語は、これまでのほのぼのとした3話と一転してシリアスな展開に。
大震災により神社が崩壊します。陽気な神様の一人芝居のような語りは、「(沈黙)」に変わります。神様は復活できるのか、そしてさらに迫る大地震を食い止めることができるのか…。
■万城目タウン
…という風に、人知を超えた万城目ワールド全開というよりは、ほのぼのとした万城目タウンを訪れる感じです。
最後には、万城目学さんのある作品の人気キャラクターも登場しますしね。
万城目学さんは、京極夏彦さんとの対談のなかで、この「パーマネント神喜劇」の底流に、京極さんの影響があることを明かしています。
それは、あるニュース番組で、ダム建設の報道に対して京極さんが放った一言。
「ダムができたら妖怪が死ぬ。ダムができたら、そこにある村が沈んで、住んでいた人が散らばってしまう。そうすると、みんなの記憶や歴史が消えるから、そこにいた妖怪もいなくなるんです。」
「パーマネント神喜劇」の神様が、懸命にひとびとの願いを叶えようとする気持ちは、ひとびとと街のつながりを大切にしているからかもしれません。
ありがとう、万城目学さん! ありがとう、パーマネントな神様たち!