こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、「君の名は。Another Side:Earthbound」糸守町の"あの日"へ紡ぐアナザーストーリーです。
「夢中図書館 読書館」は、小説や雑誌などの感想や読みどころを綴る読書ブログです。あなたもお気に入りの一冊を見つけてみませんか?
■君の名は。Another Side:Earthbound
「君の名は。」
新海誠さんが監督・脚本を務めた傑作アニメーション映画です。
東京で暮らす少年・瀧(たき)と、飛騨の山深い田舎町で暮らす少女・三葉(みつは)。
この2人の身に起きた「入れ替わり」という不思議な現象と、1200年ぶりに地球に接近する彗星をめぐる出来事を描きました。
1200年の時を結ぶ壮大なストーリーと、同じく時を超えて紡がれる2人の恋物語が、多くのファンの心をとらえました。
館長ふゆきもハマりました…。映画の舞台となったスポットを巡る「聖地巡礼」も行ったほどです。
そんな「君の名は。」ファンにはたまらない、映画では描かれなかったアナザーストーリーを描く文庫本があります。
それが、新海誠監督「君の名は。」特別編、加納新太著「君の名は。Another Side:Earthbound」です。
本書に納められているのは4つのショートストーリー。
映画にも登場した4人の視点から、糸守町の"あの日"に繋がるアナザーストーリーが描かれます。
第1話は、「ブラジャーに関する一考察」。
三葉と入れ替わった瀧の視点から、映画では描かれなかった糸守の学園生活が描かれます。
第2話は、「スクラップ・アンド・ビルド」。
三葉の同級生・勅使河原克彦、通称テッシーの視点から、「狐憑き」にあった三葉や彼らの故郷・糸守町が描かれます。
第3話は、「アースバウンド」。
三葉の妹・四葉が、時折別人のようになる三葉を心配してさまざまな"お節介"を焼きます。すると四葉の身にも不思議な現象が…。
第4話は、「あなたが結んだもの」。
三葉の父・俊樹の視点から、糸守の"あの日"の出来事と、20年前の二葉との出会い…そして別れが描かれます。
■あなたが結んだもの
今日は、その4つの短編のなかから、最も印象に残った第4話「あなたが結んだもの」を取り上げましょう。
「お前は…誰だ?」。
物語は、映画でも描かれた、糸守町の"あの日"のクライマックスシーンから始まります。
宮水俊樹の前に現れた、自分の娘・三葉の姿をした三葉ではない誰か…。
彗星がここに落ちると訴える"それ"が立ち去ると、俊樹はこれまで封印していた記憶のなかに引きずり込まれるのでした。
今は糸守町長を務める俊樹は、元は民俗学者でした。
この糸守にやって来たのも研究の一環…。そしてここで初めて、二葉と出会ったのでした。
当地の古社・宮水神社の跡取りとなる巫女・二葉は、当社に残る伝承を丁寧に俊樹に語ります。
組紐を崇める祭祀や竜の伝説、宮水に伝わる神楽舞…。これ、「君の名は。」ファンにはたまりませんよね…。
やがて2人は結婚し、子供を授かります。三葉、そして四葉。義母の一葉も笑顔を浮かべます。
しかし、幸せは長く続きませんでした。二葉が病に冒され命を落とします…。悲しみの癒えない俊樹は家を出ました。
この辺りは、映画でもフラッシュバックされてましたね…。こういうことだったのかと、胸アツになります。
「こういうことだったのか」が最高潮に達するのは、この短編でも映画でも終盤に訪れる糸守町の"あの日"のシーンです。
夜空で彗星が2つに割れたとき、俊樹の前に本物の三葉がやって来ます。
やがて繋がっていく全ての過去の記憶、糸守に伝わる伝承の意味、二葉の最後の言葉…。
映画史に残るラストシーン…そこにつながるアナザーストーリーがここにあります。
糸守町の"あの日"をもっと知りたい方は、ぜひ頁を開いてみてください。
ありがとう、「君の名は。」! ありがとう、「君の名は。Another Side:Earthbound」!