こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、手塚治虫さんの代表作「ジャングル大帝」をとり上げます。
■あらすじ
アフリカ大陸のジャングルに君臨する王、白いライオンのパンジャ。
彼は、人間に捕らえられた妻を救い出そうとしてハンターに殺されます。
妻ライオンは動物園に運ばれまる船のなかで、王子を産み落としました。
その子こそ、レオ。パンジャの血を引く白ライオンでした。
「おとうさまのように強い勇ましいジャングルの王さまになるのよ」。
彼女は涙をこらえて、レオを船から逃がすのでした…。
そしてレオは、心優しい少年ケンイチに助けられ、念願のジャングルに戻ります。
しかし、王パンジャを失ったジャングルは荒れ放題。レオは、動物たちのために王国の再建に踏み出しますが…。
レオの前に立ちはだかる、片目のライオン・ブブ、アフリカゾウの群れボス・パグーラ。
そしてジャングルの平穏を乱す、私欲にまみれた人間たち。
果たして、レオはパンジャの意志を受け継ぐ「ジャングル大帝」となれるのか…。
■感想
「ジャングル大帝」は、「鉄腕アトム」と並ぶ手塚治虫さんの代表作です。
1950年11月から1954年4月まで、月刊漫画誌「漫画少年」に連載されました。
この作品の前まで、大阪で単行本の書下ろしを中心としていた手塚治虫さん。
「ジャングル大帝」から軸足を連載漫画に移し、連載中の1952年には東京に移住。漫画家に専念することになりました。
何度もアニメ化されている同作品。シリーズによっては原作と異なるオリジナルストーリーがあります。
実は漫画原作も、単行本化にあたって手塚治虫さんが書き直しを加えているため、内容の違ういくつかのバージョンがあります。
現在読むことのできる漫画版は全3巻。
物語はレオを中心に展開しますが、父のパンジャ、子供のルネ・ルッキオを含め、一家三代を描く人間ドラマならぬライオンドラマです。
大まかに言うと、1巻がパンジャと幼少期のレオ、2巻が青年期のレオ、3巻が壮年期のレオと幼少期のルネを描いています。
そこに、月光石という謎の石をめぐる人間たちの思惑が絡まり、アフリカ大陸を舞台とした壮大なドラマに仕上がっています。
ストーリーもスケールもでかい…。あらためて、手塚治虫さんの才能に舌を巻く名作です。
■見どころ
そんな「ジャングル大帝」から、個人的な見どころを3つ紹介しましょう。
1.ジャングル交響曲
最初は、レオがジャングルの王者になるきっかけになったとも言える「ジャングル交響曲」のシーン。
はじめてアフリカの地に足を踏み入れたレオですが、弱肉強食の掟に自信を失います。
同じくレオの心優しき友人ケンイチも、たった一人ジャングルに残され意気消沈しています。
そんなケンイチを励まそうと、レオが動物たちに声をかけて企画したのが音楽、ジャングルのオーケストラでした。
その歌声は、ケンイチを励ますだけでなく、ジャングルに住む動物たちの心を癒します。
見開きで描かれる動物たちの合唱シーンは圧巻…。これをきっかけに、レオはジャングルの王として力強い一歩を踏み出すことになるのです。
2.ブブとの決闘
つづいて物語中盤、片目のライオン・ブブとの最終決戦。
父パンジャと張り合っていたブブは、レオが人間に捕らえられている隙に王国を荒らし、動物たちはちりぢりに…。
恋人ライヤまで奪ってジャングルから逃げ出そうとしていたのでした。
懸命の追走により、ついにブブとの雌雄を決する戦いがはじまります。
幼少期のレオはブブにまったく歯が立たずに蹴散らされています。決戦の行方は果たして…?
ライヤとの関係も見どころの一つ。勘違いからすれ違う2人(2匹)ですが、さまざまな苦難を乗り越えてお互いの気持ちを確かめ合います。
やがて迎える、ジャングルの結婚式は素敵な名シーンです。
3.ムーン山
そして物語終盤、ムーン山で迎えるレオの最期…。
伝説として伝えられる謎の山、ムーン山。
作品のテーマの一つ、「月光石」の秘密を追い求めて、レオは人間と一緒に過酷な登山に挑みます。
猛烈な風と雪が吹きすさぶ魔の山、ムーン山。
それは登山隊の命を次々と奪っていきます。そしてレオも視力を失うのでした…。
とうとう、レオとヒゲオヤジ(ケンイチのおじ)2人だけになってしまうと、レオはある決断をします。それは、ジャングル大帝レオの最期の決断でした…。
後に、息子のルネが見上げる空のシーンはとても感動的です…。
他にも名シーンがいっぱい。これぞ、天才・手塚治虫さんの不朽の名作。
「ジャングル大帝」、おススメです。
ありがとう、ジャングル大帝! ありがとう、レオ!