宮城谷昌光「奇貨居くべし」!傑物・呂不韋の人生を描くアナザー・キングダム

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今日の夢中は、宮城谷昌光「奇貨居くべし」!傑物・呂不韋の人生を描くアナザー・キングダムです。
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■あらすじ

中国の戦国時代の末期
15歳になったばかりの商人・呂不韋(りょふい)は、諸国を巡る旅に出ました。

道中、さまざまな苦難に遭いながら、彼の人格を形成していく人物たちと出会っていきます。
趙の藺相如、楚の黄歇、斉の孟嘗君、戦国の思想家・荀子などなど。


奇貨居くべし(春風編)

最大の出会いは、趙に人質として出されていた秦の公子・異人でした。
異人と邂逅した呂不韋は、「奇貨居くべし」と決意して、彼に仕えることにします

呂不韋は異人の名声を高めるために、趙の名士らと交わりを結ぶように仕向けます。
その狙いどおり、異人の名声は秦本国にも届き、異人は太子・安国君の嫡子として迎えられることになりました。

この異人が後の秦の荘襄王です。呂不韋は、丞相として彼を支えました。
呂不韋は、義の政策をもって秦の版図を拡げていきますが、彼の前に立ちはだかる人物がいました。
それが、荘襄王の子・後の始皇帝です…。

商人から大国秦の宰相まで上り詰めた傑物・呂不韋
彼の思い描いた万民が泰平に暮らしていける社会は、果たして実現できるのか。


奇貨居くべし(火雲編)

■レビュー

「奇貨居くべし」(きかおくべし)
珍しい物は、目下の用途はなくとも、他日を期して手元に置いておくのがよいという意味の言葉です。

この言葉のもととなった故事が、「史記」の呂不韋伝に描かれるエピソード
呂不韋が、趙で不遇をかこっている秦の公子・異人(後の荘襄王)と出会って決意した言葉です。


奇貨居くべし(黄河編)

まさに、「奇貨居くべし」として好機を逃さなかった傑物・呂不韋を描いた小説が本作です。
作者は、古代中国の偉人たちの物語を数多く手がける宮城谷昌光さん

本作「奇貨居くべし」は、文庫にしてなんと全5巻という長編小説
春風編(1巻)、火雲編(2巻)、黄河編(3巻)、飛翔編(4巻)、天命編(5巻)という構成です。

物語前半は、呂不韋の少年期から青年期まで、商人として大成するまでの流れを描きます。
物語後半は、呂不韋が秦の宰相として、理想の政治を追求する姿が描かれます。


奇貨居くべし(飛翔編)

■アナザー・キングダム

呂不韋と言えば、漫画「キングダム」では、秦王政や信たちの宿敵として立ちはだかる人物。
強大な権力を持って、政たちを圧迫し暗殺まで企てる、物語前半の最大の悪役として描かれています。


キングダム(39)

本作「奇貨居くべし」で描かれる呂不韋は、そんな悪者像とは真逆
戦乱に苦しむ民衆をたすけようとする、義侠心あふれる人物として描かれます。

どちらが真実の姿かは、いまとなっては闇の中ですが、一商人から天下の丞相にまで上り詰めた人物
先を見通す眼力はもちろん、人物としての魅力や胆力も相当なものだったのでしょうね。

一方で、秦王政は、厳格な法治政治を遂行する、冷酷で狭量な人物として描かれています。
この設定は、「キングダム」の熱烈なファンの方にはとても受け入れがたいものでしょうね…。


奇貨居くべし(天命編)

そういう意味では、アナザー・キングダムとして、想像力高めにこの本を読むのがいいかもしれません。
特に物語終盤では、「キングダム」の世界と時代背景が重なっていきます。
政や呂不韋はもちろん、廉頗や白起、蒙驁、春申君(黄歇)、李斯といった人物も物語に登場してきます。

「キングダム」ファンにも、時代小説好きの方にもおススメ。
高い志を持った若者の成長ストーリーとしても楽しめます。
アナザー・キングダム、中国戦国時代の傑物・呂不韋を描いた「奇貨居くべし」。おススメです。

ありがとう、奇貨居くべし! ありがとう、宮城谷昌光さん!

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