あの夏は書き換えられたのか?SF史上最悪のパラドクス…法条遥「リライト」

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、あの夏は書き換えられたのか?SF史上最悪のパラドクス…法条遥「リライト」です。
「夢中図書館 読書館」は、小説や雑誌などの感想や読みどころを綴る読書ブログです。あなたもお気に入りの一冊を見つけてみませんか?

■あらすじ

1992年夏、静岡県の中学2年生・大槻美雪は、未来から来たという転校生・園田保彦と出会います。
保彦は、300年後の未来で読んだある小説の続きを探すために過去へタイムリープしてきたと語ります。美雪は保彦と秘密を分かち合い、淡い恋のひと夏を送ります。

しかし7月21日、突如起こった旧校舎の崩壊事故に巻き込まれて、保彦は瓦礫の中に閉じ込められます。
美雪は保彦を救うため、彼が持っていたタイムリープの薬を使って10年後の未来へ跳びます。そこには、大人になった自分が用意した謎の機械が置いてありました…。

そして10年後の2002年。小説家となった美雪は、10年前の自分が、「謎の機械」(携帯電話)を取りに来るのを待ってきました。
しかし、いくら待っても過去の美雪は現れません。この携帯電話を使い奇跡的に保彦を救出、そして別れのファーストキスでひと夏の恋は終わる、はずなのに…。

美雪は、過去が「リライト(書き換え)」されてしまったのではないかと疑念を抱き始めます。
そして次第に、自分の記憶と現実が食い違っていることに気づきます。美幸の知らない卒業アルバムの写真、同級生の不可解な殺人被害、不審なストーカーの存在…。
何が起きているの?過去の出来事や記憶が書き換えられている謎を追ううちに、美雪は驚くべき真実に直面することになるのです…。

■読みどころ

「リライト」は、法条遥(ほうじょうはるか)さんが執筆し、2012年に単行本が刊行された小説です。
タイムリープを扱った青春ミステリー作品ですが、タイムリープによる矛盾が複雑に絡み合い、「SF史上最悪のパラドックス」と称されたりしています。

リライト(新版)

物語は、1992年の夏と10年後の2002年の夏という、2つの時間軸で交互に展開していきます。
読み進めていくと何か違和感をおぼえるようになるのですが、実はこのうち1992年パートは語り手が複数人物に分かれているのです。

はじめは美雪だと思っていたのが、「おや?」「あれ?」と読み手が徐々に違和感に気づいていく仕掛けはなんとも絶妙…。
そして気づいたときには、誰の視点が正しいのか、どの時間軸が本物なのかという、タイムリープの矛盾にどっぷり巻き込まれています。

そして迎えるラスト40ページの種明かしは圧巻…。詳細は語れませんが、これまでのタイムリープものとは全く異なる衝撃の展開が繰り広げられます。
ここで様々な伏線が回収されていくのですが、それでホッとするかというとむしろ逆…。物語の登場人物はもちろん、読み手の思い込みすら「リライト」するようなラストが待っているのです…。

■映画版「リライト」

この「リライト」ですが、2025年6月に池田エライザさん主演で映画版が公開されました。
これがとても素敵な作品に仕上がっているので、機会があればぜひご覧になられることをおすすめします。

映画 リライト 映画チラシ

ストーリーも小説版をベースにしながらも、ところどころ異なる解釈やエピソードを持ち込み、「アナザー・リライト」のような作品になっています。
特に、メガホンをとった松居大悟監督の強い思いで、物語の舞台を静岡から尾道に変えているのは鮮やかです。もちろん大林宜彦監督の「時をかける少女」をオマージュしたもの。

それは、タイムリープものとして誰もが思い浮かべる「時をかける少女」の鑑賞体験も背負ったまま、「リライト」の世界に飛び込んでほしいという思いから。原作者の法条遥さんも快諾しました。
オール尾道ロケで製作された映画版「リライト」は、「時をかける少女」の余韻を漂わせながら、あえて「タイムリープの矛盾」を突きつけるという、映像のパラドックスも提示することに成功しました。

リライト(映画ノベライズ)

小説版「リライト」と映画版「リライト」。好みはあるかもしれませんが、どちらも独特な世界観をつくり出していてすばらしい作品です。
館長ふゆきは、映画版「リライト」を鑑賞してから小説版「リライト」を読み込み、どっぷりと法条遥さんの「リライト」の世界にハマりました。

ちなみに、同作品は「re~シリーズ」としてシリーズ化されており、「リビジョン」「リアクト」「リライブ」と続きます。
これらの作品はそれぞれ独立した物語でありながら、「リライト」で提示されたタイムパラドックスの世界観を共有したストーリーが展開します。
さらに深いタイムリープの世界へ…。まずは本作「リライト」からディープで予測不能な世界へと、一歩足を踏み入れてみませんか。

今日の夢中は、あの夏は書き換えられたのか?SF史上最悪のパラドクス…法条遥「リライト」でした。
ありがとう、「リライト」! ありがとう、法条遥さん!

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