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館長のふゆきです。
今日の夢中は、徳川家康(11)竜虎の巻!石川数正出奔す…家康と秀吉、白熱する駆け引きの行方…です。
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■あらすじ
家康と秀吉が戦った「小牧・長久手の戦い」。
局地戦では家康が勝利しましたが、天下の趨勢は秀吉へと傾いていきました。
家康は、次男・於義丸(結城秀康)を秀吉の養子に送ることで、秀吉と講和しました。
しかし、天下の形勢が見えない三河の家康家臣団は、反秀吉を叫ぶ声多く主戦論がうずまきます。
そのような中で、秀吉との交渉を一身に背負ったのが、家康の側近・石川数正でした。
このとき関白にまで登りつめた秀吉と戦うことの愚を知る数正は、一人必死に秀吉との和睦を説きます。
やがて家中で孤立した数正は、家康のもとを出奔。秀吉に帰属します。
しかし、実は家康の思いも数正と同じ…。数正出奔を機に、秀吉との和平交渉が大きく動き出します。
秀吉が求めるのは、家康が上洛して大坂城で謁見、諸大名の前で豊臣氏に臣従すること…。
そのために、妹の朝日姫を人質同然に家康のもとに嫁がせ、さらに上洛中は大政所(秀吉の母)を人質として送ることを約しました。
果たして家康はどうするのか…。家康と秀吉、両雄の関係はどうなるのか…。戦国乱世の行方は?
■石川数正の出奔
時代小説史に残る名著、山岡荘八「徳川家康」全26巻。
第11巻「竜虎の巻」では、その巻名のとおり、"竜虎"家康と秀吉が白熱の駆け引きを繰り広げます。
この2人の狭間で窮地に陥ったのが、家康の側近で、秀吉との交渉を一手に担う石川数正でした。
良くも悪くも「三河」の家康家臣団が主戦論を掲げるなかで、数正は「天下」を目前にした秀吉と戦うことの愚を唱えます。
「いまご当家が秀吉と争うてどうなるのじゃ。いずれが勝っても天下は再び大騒乱。いや時には時の勢いがある。十中七、八までは当家の負けであろう。そのような戦をするのは匹夫の勇じゃ。ここではならぬ堪忍をして、なぜ秀吉を助けぬのじゃ。秀吉を助けながら、太平の天下を狙う道があるとは思わぬのか」
八方から鋭い非難の声が上がるなか、数正は、家康の眼のなかに深い悲哀のいろが隠されていることに気づきます。
家康の思いも数正と同じ…。しかし、三河武士の暴発を防ぎ真の和平を導くには、身内にすら本心を明かすことは許されないのです。
そして数正は、人質時代から付き随ってきた家康のもとを出奔することを決意します。
それは、数正の身を挺した開戦回避策でした。実際に徳川軍の機密を知る数正の出奔は、三河家臣団に一大警鐘を鳴らし、また秀吉に開戦を急ぐにあたらぬという自信を与えたのです。
■家康のリーダーシップ論
本書の中で、家康のリーダーシップ論というべき象徴的な記述があります。
それは、家康が幼いわが子・長松丸(後の秀忠)に諭す言葉です。
「家来というものは禄でつないではならず、機嫌をとってはならず、遠ざけてはならず、近づかせてはならず、怒らせてはならず、油断させてはならないものだ」
「では、どうすれば宜しいので」と長松丸が問うと、家康はこう答えました。
「家来はな、惚れさせねばならぬものよ。別の言葉で心服ともいうが、心服は事理を超えたところから産れて来る。感心させて感心させて、好きでたまらなくさせてゆくのじゃ」
これ、今の時代にも通じる真理ですよね。パワハラ上司さんに聴かせてあげたい…。
石川数正も家康に心服していました。岡崎から出奔する際、瞼の裏に家康の顔が明滅します。
人質に送り出される6歳の家康、駿府で悪戯する8歳の家康、田楽桶狭間の合戦のあとの顔、そして最後に鶴の吸い物とともに声を掛けられた12日前の顔…。
(わしは、よくも、よくも殿に惚れたものじゃ…)
人質時代の家康に仕えて以来、一にも家康、二にも家康。不思議なことに、数正はその献身に満足していました。
すべては「天下を家康に取らせたい」という希いゆえ…。果たして、その思いは家康に、そして三河家臣たちに届くのでしょうか…。
そして、いよいよ迎える朝日姫の輿入れのとき…。果たして家康と家臣団はどのような決断をするのか…。
今日の夢中は、山岡荘八「徳川家康(11)竜虎の巻」でした。続きはまた当ブログにて…。