永井路子「北条政子」時代に翻弄された尼将軍のかくも哀しい物語

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館長のふゆきです。

今日の夢中は、永井路子「北条政子」時代に翻弄された尼将軍のかくも哀しい物語です。
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■あらすじ

伊豆の豪族・北条時政の娘、北条政子
彼女は、伊豆に配流されてきた源頼朝と恋に落ち、そして結ばれます。


(蛭ヶ島の夫婦/源頼朝と北条政子)

やがて夫頼朝は、打倒平家を掲げて挙兵します。
源平の合戦、鎌倉幕府開設、そして鎌倉殿(将軍)の御台所へ…。

図らずも動乱の渦にもまれる政子の人生…。
華やかに見える権勢のかげで、政子は周囲の権謀術数に巻き込まれていきます。

そして何よりも己の深い愛憎の念が、政子と一族の運命を大きく変えていくことになるのです。
鎌倉殿の妻であり母となる、北条政子。彼女は激動の時代をいかに生きたのか…。

■北条政子

北条政子。皆さんはどんな女性を想像するでしょうか。
源頼朝の妻、尼将軍、北条執権政治の陰の立役者…。

日本三大悪女のひとりに挙げられるほど、そのイメージは、強くて恐い女性です。
実際に、政子は嫉妬深く、頼朝が亀の前と浮気していると知ると、その邸宅を襲って破壊したりしています。

ただ、そうした逸話はあるものの、この本で描かれる政子の印象はまるで違います。
哀しい女性…。激変する時代に翻弄された、悲運の女性の姿がそこにありました。


北条政子

物語は前半、流人源頼朝との出会いや恋愛が描かれ、政子の一途さにキュンとします。
しかし、それが政子の哀しい運命のはじまりでした…。

政子は、鎌倉殿をめぐる権謀術数に巻き込まれ、次々と大切なひとを失っていきます
夫頼朝、長女大姫、次女三幡、長男頼家、次男実朝…。

結果的に政子は、夫と自身の生んだ子4人全てを失い、その全てを見届けました。
しかも、いずれも天寿を全うしたとは言えない最期…。政子の心中やいかにと心配になるほどです。

■壮絶な運命

(以下、ネタバレを含みます。ご留意ください。)

長女大姫は、幼くして源(木曾)義仲の嫡男義高と婚約しますが、その義高を父頼朝が殺害。
大姫は悲嘆のあまり病の床につくようになります。そして、政子らの懸命の努力も甲斐なく、20歳で早世しました…。

次女三幡も、14歳で早世しています。三幡は、帝の妃になるべく入内工作が進められているなか、高熱を出し病となります。
政子は京の名医を招き投薬治癒をはかりますが、甲斐なく死去…。その死には毒殺説も囁かれました。政子の心中やいかに…。

長男頼家は、父頼朝の跡を継ぎ鎌倉2代将軍となりますが、横暴さが目立ち人後にもとる行動も目に付くようになります。
やがて政子は頼家を出家させ修善寺に幽閉。物語は最後の母子の決別シーンを強烈に描いています。頼家は北条氏によって惨殺されました。


(源頼家の墓/写真ACより)

次男実朝は、頼家に代わって将軍の座に就きます。穏やかな性格の実朝と執権北条氏の手腕により、鎌倉に一時平穏が訪れます。
しかし、悲劇は思わぬ形で訪れました。右大臣拝賀の式のために鶴岡八幡宮に入った実朝は、刺客に襲われ暗殺されます。実朝を襲ったのは公暁。頼家の子、政子の孫でした…。


(鶴岡八幡宮/写真ACより)

実朝の死によって、政子はわが子全てを失います
しかも、その命を奪ったのは、政子が罪の意識から援けてきた頼家の子公暁でした…。

政子にとって、どれほどの衝撃だったことでしょう…。
その公暁も三浦義村の手によって討ち取られます。政子は物語の最後でつぶやきます。

なぜかくも恐ろしい終末を私は味わわなければならないのか。

大姫、三幡、頼家、実朝、公暁…
政子が愛した子らは、その深い愛が宿業の炎を招いた如く、非業の最期を遂げました。

私はたったひとりぼっちなのだ。
この惨たる孤独に耐えて、はたして私は生きていけるだろうか…。

政子の言葉が突き刺さります。運命はかくも非情なのか…
しばらく頁をめくる手が止まりました。

今日の夢中は、永井路子さんの傑作時代小説「北条政子」でした。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(北条政子役は小池栄子さん)では、果たしてどのように描かれるのか…。楽しみでもあり、恐ろしくもあります。

ありがとう、「北条政子」! ありがとう、永井路子さん!

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