和田竜「のぼうの城」!2万対5百…でくのぼう武将覚悟の"戦いまする"

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館長のふゆきです。

今日の夢中は、和田竜「のぼうの城」!2万対5百…でくのぼう武将覚悟の"戦いまする"…です。
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■あらすじ

周囲を湖で囲まれ、「浮城」とも呼ばれる武蔵国「忍城」(おしじょう)。
城主の成田氏一門の長親は、図体はでかいが何もできない「でくのぼう」。ただ、領民からは親しみを込めて「のぼう様」と呼ばれていました。

その忍城に、天下統一を目前に控えた豊臣秀吉軍が迫ります。率いるのは、秀吉麾下随一の切れ者、石田三成
三成率いる軍勢は約2万。対する忍城は、城主・成田氏長が小田原城に入っていて不在、その兵数はわずか5百でした…。

圧倒的な兵力差を前に、秀吉方への降伏を意図していた氏長はじめ忍城でしたが…。
「戦いまする」。三成軍使者の度重なる愚弄に対して、城主代理となった「のぼう様」こと長親が堪忍できずに、突然言い放ったのです。

そして始まる、戦国史に残る壮絶な戦い「忍城の戦い」。緒戦こそ勝利した忍城方でしたが、やがて三成軍に追い詰められていきます。
三成が選択したのは、近くを流れる利根川を利用した「水攻め」でした。次第に水没していく忍城…。そこで再び動いたのは、のぼう様こと成田長親でした。
長親のとった窮地挽回の秘策とは…。そのとき三成は?忍城家臣は?領民は?忍城の運命はいかに…。

■のぼうの城

今日とり上げるのは、和田竜さんの歴史小説「のぼうの城」です。
和田さんの小説家デビュー作にして直木賞候補ともなった名作。野村萬斎さん主演で映画化もされました。

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和田竜さんは、ドラマ制作のADを務めたり脚本を手がけたりしていることもあって、その小説はテンポよく愉快にドラマチックに進むのが特徴。
そのスタイルは「ニューウェイブ時代小説」などと呼ばれ、本作「のぼうの城」でもその作風を存分に堪能できます。

何よりも本作を痛快なドラマに仕上げているのは、「忍城の戦い」で相対する武将2人の対照的な姿です。
片や、才気のかたまり石田三成。片や、才気の欠片も感じられない…領民から「のぼう様」(でくのぼうの略)と呼ばれる成田長親

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三成は、わが身の栄達を「当然のことだろう」と、周りを「睨め回す」ような自信家でした。
実際に才気に満ちあふれ、忍城の地形を見て、秀吉が備中高松城で行った「水攻め」を思い立ち、忍城を追い込んでいきます。三成はこの戦いに負けるなど、一分たりとも思っていませんでした

一方の長親は、馬に乗れない、刀術も槍術もできない、田植えすらろくにできない、でくのぼう…。
幼馴染であり盟友の正木丹波は、その姿をいつも苦々しく思うのですが、一方で長親に不思議な違和感…「得体の知れぬ将器」を感じるのです。

■「戦いまする」

「のぼう様」こと長親の持つ「得体の知れぬ将器」…。それが顕れる象徴的なシーンがあります。
2万対5百…。圧倒的な兵力差を楯に、三成方の軍使者・長束正家が高圧的な態度で、城方を侮辱するような降伏条件を言い渡します。

長親「腹は決めておらなんだが、今決めた」。正家「なら早う言え」。正家がそう言った次の瞬間…。

のちの忍城城代にして忍城方総大将、成田長親は、この田舎城を戦国合戦史上、特筆すべき城として後世に位置付けさせる、決定的な一言を発した。
「戦いまする」

すでに内々に降伏の意志を固めていた家臣団は愕然とします。裏に連れていかれ、丹波に叱りつけられる長親…。
ただ、それでも長親は意志を曲げませんでした。「いやなものはいやなのだ」。そして丹波や見守る侍たちに向って吠えたのです。

「武ある者が武なき者を足蹴にし、才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。これが人の世か。ならばわしはいやじゃ。わしだけはいやじゃ。」

カッコいいですね、長親。これぞ、和田竜作品の面目躍如、読むほどに気持ちが高ぶります
「それが世の習いと申すなら、このわしは許さん」。その瞬間、成田家臣団の心は一つに強く結束することになったのです。

そして迎える一大決戦。戦国史に残る忍城の水攻め。水没間近となった忍城で、再びこの男が動きます。
成田長親は、城を囲む湖に船を漕ぎ出すと、敵兵の前で田楽踊りをはじめたのです。そんな長親を、三成に指示された狙撃兵が狙います。

湖上に響く銃声…。はたして長親の運命は?やがて明らかになる長親の狙い…。そのとき家臣は?領民は?忍城は落ちてしまうのか…。
終盤のクライマックスは、さらに胸がアツくなること間違いなしです。今日の夢中は、2万対5百…それでも戦いを選択した成田長親と忍城を描いた時代小説「のぼうの城」でした。傑作です。

ありがとう、「のぼうの城」! ありがとう、のぼう様・成田長親!

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