こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、TVドラマ化もされた人気漫画「テセウスの船」をとり上げます。
■あらすじ
1989年6月24日、北海道音臼村で、児童ら21人が毒殺される事件が発生…。
逮捕されたのは、村の警察官だった佐野文吾でした。
その事件から28年後、佐野の息子・田村心は、父親に冤罪の可能性があると知り、北海道音臼村に向かいます。
そして事件現場を訪れた心は、突如濃霧に包まれ気を失います。
目を覚ますと、そこは1989年…。事件が起きる半年前にタイムスリップしていたのでした。
心はそこで初めて、自分の父親・佐野文吾と出会います。
やがて音臼村で発生する不可解な事件…。
心は文吾とともに、未来を変えるために行動を開始します。
果たして心は事件を止めることができるのか?真犯人は誰なのか?未来を変えることはできるのか?
■漫画「テセウスの船」
TVドラマにもなった「テセウスの船」。
ドラマでは、主人公の田村心を竹内涼真さんが、父親の佐野文吾を鈴木亮平さんが演じました。
原作は、漫画家・東元俊哉さんの作品で、漫画雑誌「モーニング」で2017年から2019年まで連載されました。
話数にすると全89話。コミックスでは全10巻のクライムサスペンス漫画です。
すでに、メディアやSNSなどでストーリーや犯人が明かされていますが、何と言ってもびっくりなのは、原作漫画とドラマで犯人が異なること…。
正確に言うと、原作漫画で明かされる真犯人のほかに、ドラマでは共犯者がいたという設定になっていました。
今日は、だいぶブームも落ち着いてきましたので、そうしたネタバレ部分も含めて、原作漫画とドラマの違いを掘り下げましょう。
■漫画とドラマの違い
それでは、原作漫画とドラマの違いを見てみましょう。
※ネタバレを含みますので、見たくない方は飛ばしてください。
まずは、事件の起こる音臼村の所在地。漫画では北海道ですが、ドラマでは宮城県でした。
さらに、タイムスリップする心の「現在」は、漫画では2017年ですが、ドラマでは2020年。これはしょうがないですよね。
発生する事件も所々で異なります。
三島明音の事件では、漫画では長谷川翼と明音の2人が死亡しましたが、ドラマでは明音は生き残りました。
佐々木紀子殺人事件では、漫画では木村さつきが包丁で刺殺。ドラマでは毒殺でした。
しかもこのとき、漫画ではさつきから真犯人の名前を聞いた鈴(心の姉)が、心にその正体を伝えています。
この後、音臼小学校跡地で心が真犯人と対峙しますが、ドラマでは心が真犯人に気づいていないのでドラマチックでしたね。
物語の所々で挿入される真犯人の犯行日記。
漫画ではカセットテープへの音声録音でしたが、ドラマではワープロへの記録でした。
これもしょうがないですよね。声で犯人が分かっちゃうから。ドラマではワープロが物的証拠に利用されましたね。
そして衝撃の真犯人…。
物語の終盤、鈴の同級生・加藤みきおが大量殺人を犯していたことが明かされます。その理由がサイコでした…。
ドラマでは少年時代のみきおを柴崎楓雅くんが怪演。圧巻の存在感を示しました。
漫画でもドラマでも、みきおが巧妙に罠を張り巡らせますが、ドラマでは意外な共犯者がいました。
ドラマ放映当時はこれが誰なのかで、大いに盛り上がりましたね。漫画ではチョイ役の、まったく印象に残らない人物でした。
一方、実は漫画でも、ある「共犯者」が登場します。個人的にはこっちの共犯者のほうが怖い…。
さて、漫画とドラマ、どちらのストーリーがハマるか。そこは皆さんの感じ方次第でしょうね。
■テセウスの船とは?
…ということで、漫画もドラマもどちらも楽しめた「テセウスの船」。
ブームになったのも納得の面白さでした。
ところで、タイトルの「テセウスの船」とは、どんな意味でしょうか。
この言葉は、ギリシャの神話を起源とするパラドックスの一つです。漫画でも、そのギリシャの伝説が挿入されています。
その昔、クレタ島から帰還した英雄・テセウスの船を後世に残すため、修復作業が行われた。
古くなって朽ちた部品を徐々に新しい部品に交換していくうちに、当初の部品は全てなくなった。
ここで矛盾(パラドックス)が生じる…。
この船は、最初の船と同じといえるのか?
そうなんです。「テセウスの船」は、タイムスリップを通じたパラドックスがテーマとなっています。
過去を変えると、未来も変わる…。心も文吾も、鈴も家族も変わりました…。そしてみきおも…。
最後に、過去とともに変わった現在で、文吾たち家族が一同に集まります。
そこで、過去と未来をつなぐタイムカプセルが開けられます。
そこに入っていたものとは…。これもパラドックスなんでしょうね。テセウスの船…。
未来は変えられる…。最初の船と構成するものが変わったとしても、大切なものが失われることはありません。
ありがとう、テセウスの船! ありがとう、心&文吾!