浅田次郎「珍妃の井戸」誰が珍妃を殺したか?歴史の封印を解く

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、浅田次郎さんの名作、「珍妃の井戸」をとり上げます。

■あらすじ

列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝末期の北京…。

その混乱のさなか、紫禁城の奥深くで、ひとりの妃が命を落としました
それも、小さく深い井戸の底に、頭から投げ込まれて…。

その妃の名は珍妃。皇帝の寵愛を一身に受けた、若く美しい妃でした。

珍妃はなぜ、誰に殺されたのか…。
事件を知った英独露日の高官は、中国の近代国家への扉を開くために、真相の究明に乗り出します。

事件の鍵を握る人物たちへの聞き取りを進める4人。そして最後にある人物のところに向かいます
果たして、珍妃を殺したのは誰か。あまりに切ない事件の真相とは…。

■珍妃の井戸

「珍妃の井戸」
浅田次郎さんの描く中国の清朝末期を描く歴史ミステリー小説。名作「蒼穹の昴」の続編です。


珍妃の井戸

「歴史ミステリー小説」と称しましたが、清朝末期に実際に起きた珍妃殺害事件(1900年)を題材に、浅田流の謎解きが繰り広げられます。
歴史上は、西太后の命によって殺されたというのが定説。珍妃が投げ込まれた井戸は、北京の紫禁城内に実在します。

浅田さんは、その定説に真っ向から挑み、小説という形で珍妃殺害事件の封印を解きました。
「蒼穹の昴」も史実をもとにその舞台裏をえぐり出す圧巻のストーリーでしたが、本作も負けず劣らず迫力に満ちあふれています。


蒼穹の昴(1)

物語は1902年、英国からやって来たソールズベリー卿が、謎の女性から珍妃の事件を聴くところから始まります。
2年前の夏の日、義和団の乱による混乱の最中、珍妃は何者かに井戸に落とされ殺された…。

皇帝の寵愛を一身に受けていた美しき妃・珍妃。誰が彼女を殺したのか…。
ソールズベリー卿ら英独露日の高官4人は、真相を究明することが、閉ざされかけた中国の近代国家への道を開くことになると、犯人探しに乗り出します。

そして、事件の鍵を握る人物たちへの聞き取りを進めていくのですが…。

■誰が珍妃を殺したのか

1章ごとに事件の鍵を握る人物たちが語っていくスタイルは、浅田さんの「壬生義士伝」と同じ。
新聞記者トーマス、元太監・蘭琴、将軍・袁世凱、皇帝側室・瑾妃、太監・劉蓮焦、廃太子・溥儁が、事件について証言します。

聞き取りを通じて、少しずつ明らかになっていく珍妃殺害事件の全容。
ただ、肝心の「誰が珍妃を殺したか」については、てんでバラバラ証言が食い違います

誰が嘘をつき、誰が本当のことを話しているのか…。
確かめるために4人が最後に向かったのは、中華大陸を統べる天子、光緒帝の御所です。


(北京紫禁城/写真ACより)

真実を問う4人を前に、皇帝はついに意を決します。「ならば、語ろう。あの日の出来事を」
そして皇帝の口から語られる事件の真相…。そこで明かされた驚愕の真犯人とは…。

特に、最後の数頁は圧巻。あまりに切ない事件の真相に、胸が締め付けられます。
これは、浅田さんによる、ミステリーの形を借りた現代社会に送る警鐘ではないでしょうか。

不当な差別や非人道的な行いが蔓延る現代社会。私たちにとって本当に大切なものは何かを問いかけているようです。
私たちは、珍妃が命を落とすような未来をつくってはいけません…。そんな風に、強く思いました。

ありがとう、珍妃の井戸! ありがとう、浅田次郎さん!

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