松岡圭祐「黄砂の進撃」!義和団の乱を描く「黄砂の籠城」アナザーストーリー

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こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、松岡圭祐さん著の「黄砂の進撃」をとり上げます。

■あらすじ

物語の舞台は、清朝末期の中国…。

この広大な大陸の住人・漢民族の不満は頂点に達していました。
満州族に辮髪と纏足を強要され、さらに欧州列強からやって来た宣教師たちに生活を蹂躙されました。

このような中、「扶清滅洋(清を援け西洋海外勢を殲滅する)」を掲げる武装集団・義和団が蜂起します。
彼らは見る見る間に戦力を拡大して、ついに各国公使館が集積する北京の東交民巷に攻め入ります。

20万人の義和団・清国軍と、500人の列強連合軍。その闘いの行方は?
中国近代化の萌芽となった「義和団の乱」を、中国・義和団の視点から描く長編歴史小説。
ふとしたきっかけで義和団に身を投じた張徳成が夢見た中国の未来とは…。

■黄砂の籠城

稀代のストーリーテラー松岡圭祐さんが描く中国歴史小説「黄砂の進撃」
とり上げたのは、歴史に残る動乱「義和団の乱」です。

清朝末期に起きた義和団の乱は、キリスト教排斥運動に端を発した民衆の反乱です。
しかし北京を包囲した義和団を西太后が支持したことから、国家間の戦争へと発展。各国の公使館が集う東交民巷をめぐって、数か月におよぶ籠城戦が繰り広げられました。

「20万人の義和団・清国軍」対「列強連合軍500人」
足並みそろわぬ列強連合軍を先導したのは、駐在武官・柴五郎率いる日本でした。
その北京籠城戦を、柴五郎に仕えた櫻井隆一の視点から描いたのが、「黄砂の籠城」でした。


黄砂の籠城(上)

■黄砂の進撃

本作「黄砂の進撃」は、その義和団の乱と北京籠城戦を、中国・義和団の視点で描いた作品です。
いわば、「黄砂の籠城」のアナザー・ストーリー。両作品を編集した総集編「義和団の乱」も刊行されています。


義和団の乱

「黄砂の籠城」では、恐ろしい襲撃者として描かれた義和団。
しかし、その内実は、生活に困窮した農民たちがほとんど。外国人宣教者らの横暴に不満を持った民衆たちでした。

その義和団にふとしたきっかけで加わり、やがて大師にまで祀り上げられた張徳成
「黄砂の進撃」は、その張徳成の視点から義和団の乱を描きます。

よく歴史は勝者によってつくられると言われますが、本編は、そんな勝者の描いた歴史に対する問題提起とも言えます。
義和団に加わった貧村の若者たちは、一方的な加害者ではなく、やむを得ず決起した被害者だったのではないか…。

■義和団の乱の真相とは

物語のなかで、張徳成は、農村のみんなが教育を受けられる社会を実現したいと口にします。
それは、学びがないために不当な差別を受けたり、盲目的に上からの命令に従って犠牲になっていく…。そんな若者たちの将来を憂えたからでした。

しかし張徳成の思いが届くには、清王朝はあまりに遠く、伝統と保守にとらわれていました…。
やがて図らずも清国軍に組み入れられていく義和団。そこに列強連合軍の反撃が開始され、多数の義和団の若者たちが散っていきます。

激戦のさなか、最後に張徳成はある決断をします
それは、彼が思い描いた未来へ思いをつなぐ、切なくも勇ましい決断でした…。


黄砂の進撃

「20万人の義和団・清国軍」対「列強連合軍500人」。
「黄砂の籠城」は、500人の列強連合軍がいかに籠城戦を耐え抜いたかを描きました。
一方、「黄砂の進撃」は、20万人もの義和団がなぜ500人の籠城を攻略できなかったのか。そこに至る過程をつぶさに描きます。

この両作品を読むことで、義和団の乱の真相が立体的に解き明かされたように思いました。
物事の真実は、複眼的な視点でとらえることが大切ですね。
エンターテイメントとしても極上、ストーリーが示唆するものとしても至上な歴史小説、「黄砂の進撃」でした。

ありがとう、黄砂の進撃! ありがとう、松岡圭祐さん!

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