こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、隆慶一郎さんの小説「影武者徳川家康」です。
■隆慶一郎
隆慶一郎。
「吉原御免状」や「一夢庵風流記」などで、時代小説界に新風を吹き込みました。
もともとは脚本家として、テレビや映画など多数の作品を手がけ、その手腕は高く評価されていました。
そんな彼が小説家として活動を始めたのは、還暦を過ぎてから。
デビュー作「吉原御免状」を発表すると、そのスぺクタルあふれる作風は多くのファンを引き付けました。
その後も、「影武者徳川家康」や「一夢庵風流記」、「捨て童子・松平忠輝」などの著作を生み出します。
稀代の時代小説家として注目を集めはじめた矢先、66歳にして急逝。小説家としての実働は、わずか5年に過ぎませんでした…。
個人的に大好きな作家のひとりです。
11月4日が命日とのことで、あらためて隆慶一郎さんに敬意を表して、彼の作品を紹介します。
今日紹介する作品は「影武者徳川家康」。
大好きな作家の大好きな作品です。
影武者徳川家康(上)
■あらすじ
実は、徳川家康は関ヶ原の戦いで殺されていた…。
そんな大胆な仮説をもとに、関ヶ原の戦い以降の家康の生涯を描く長編小説です。
主人公は、関ヶ原以降、家康として生きることとなった影武者・世良田二郎三郎。
関ヶ原のときに、とっさの機転から、暗殺された家康の代わりに采配を振るうと、見事に勝利を収めます。
さらに、豊臣恩顧の武将がなお残る中、「家康がいること」の重要性から生かされた二郎三郎。内政においても天賦の才を発揮します。
しかし、それを面白くなく思う人間がいました…。家康の嫡子、秀忠です。
政権を手に入れるために、家康(二郎三郎)の生命を執拗に狙います、その手先となるのは、柳生宗矩率いる柳生忍軍。
一方、二郎三郎の人柄や目指す泰平の世に惹かれ、本多正信・忠勝ら腹心は彼を守ろうとします。
さらに、家康を暗殺した島左近と甲斐六郎をも味方につけ、陰険な秀忠らと対峙します。
果たして、影武者家康は、生き延びることができるのか…。そして、泰平の世を築くことはできるのか…。
■読みどころ
関ヶ原以降の徳川家康は影武者だったなんて、なんと荒唐無稽な…。
…とお思いでしょうが、あながち100%ないとは言えないみたい。
それを臭わす文書が残っていたり、関ヶ原を境に家康の人物像が大きく変わっているのだとか。
この作品の執筆にあたり、隆さんは膨大な史料を読み込んだそうですが、だからリアル感が半端ない。
家康影武者の生きざまも、史実に基づいて書かれているんじゃないかと思ってしまいます。
一方で、ここまで悪役に書いていいのかというくらい憎々しいのが、嫡子・秀忠。
陰湿にして残虐…。柳生もその片棒を担ぐのだから、これまでのイメージとは全然違います。
その柳生忍軍と甲斐六郎や風魔衆との戦いも見どころの一つ。
この辺は多くの時代劇の脚本を手掛けていた隆さんの本領発揮ですね。
単なる史料の焼き直しではない、その裏に隠された真実まで解き明かそうという想像力。
そこから実在の人物と史実を巻き込んで展開する壮大なドラマ…。ラストまで全く息をつかせません。
「影武者徳川家康」、おススメです。
ありがとう、影武者徳川家康! ありがとう、隆慶一郎さん!