千年の都・京都に繰り広げられる千年のたたかい「ホルモー」。ゲロンチョリー!?アガベー!?万城目ワールドのはじまり「鴨川ホルモー」。

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

小説「鴨川ホルモー」、文庫本40万部突破、おめでとうございます!

作者の万城目学氏が喜びの声をツイートしています。

“世に出て11年経っても、書店の片隅で「ホルモーォォォ!」と叫び続けている、わがデビュー作「鴨川ホルモー」の文庫版が40万部を突破しました。あなありがたや。”

鴨川ホルモーは、万城目学氏のデビュー作。
「京大青龍会」という怪しげなサークルに入ることになった主人公安倍が巻き込まれる「ホルモー」という競技を通じて繰り広げられる、愛と青春と笑いのファンタジー小説です。

■「ホルモー」とは

「ホルモーって何?」って多くの人が思うでしょう。
ホルモンではなくホルモー。本当は、より正確には、万城目氏のコメントにあるように「ホルモーォォォ!」なのかもしれませんが。。。

「ホルモー」とは、古くから京都に伝わる、一種の競技の名前。対戦型の団体競技です。
人数は、10人1チームで、敵と味方合わせて20人が試合に参加します。
最終的に相手を全滅させるか、代表者を降参させた方が勝ち。

…とここまでは、ドッジボール的なスポーツをも想起して、それほど違和感はないのですが、
このホルモー、使う道具(?)がとっても特殊なのです。

競技者が使う…否、操るのは、体長20cmほどの「オニ」。
10人1チームで、1人100匹のオニを操るので、1チーム1,000匹のオニが戦います。
相手も同じ数のオニがいるので、一試合2,000匹のオニが、競技者たる人間の発する「オニ語」による指示のもと戦います。

そのオニ語ですが、次のような感じ。

「ぐああいっぎうえぇ」(進め)
「ふぎゅいっぱぐぁ」(止まれ)
「ぐぇげぼっ」(追え)
「ぼごぎ、ぐぇげぼっ、ぼっ」(待て、追うな)
「バゴンチョリー」(取り囲め)
「ゲロンチョリー」(潰せ)
「アガベー」(飛びかかれ)

これ、街角で聞いたら、気持ち悪いひと…というか相当あぶないひと。。。

きっと、このオニ語の流れなのでしょう。
なぜこの競技が「ホルモー」と呼ばれるのかは、この競技に決着がつくときに分かります。
敗れし者の身体には、恐ろしい生体反応が。

自らの意思と関係なく、鼻の穴が破廉恥なまでに膨らみ、肺の空気がすべて吐き出されるように、その叫び声が発されます。
「ホルモーォォォ!」。
え?分かんないって?でも、そんなゲームなんです。

■万城目ワールド

この不思議な競技「ホルモー」をベースに物語が展開します。
何よりも感心するのは、その奇想天外な世界観。
万城目ワールドとも呼ばれているのですが、現実の世界を舞台にしながらも、少し目を瞑ると異次元の空間が果てしなく広がる感じ。

この後に続く「鹿男あをによし」なども同様、日常の中に、ふと気づくと非日常が隣り合わせている世界。
その非日常が、いつの間にか、毎日の生活の中心にあるようになっている。
まさに、このデビュー作「鴨川ホルモー」が、その万城目ワールドの扉を開いたのかもしれませんね。

「日常」の部分のストーリーも秀逸。
「鼻」フェチにして、さだまさしをこよなく愛する、主人公安倍。実は情に厚い好男子。
その相棒にして、後にチョンマゲ姿で京の街を闊歩することになる、高村。その天然ぶりは物語のスパイス。
ヒロイン(?)「凡ちゃん」こと、楠木ふみ。ちなみに「凡ちゃん」とは、タレントの大木凡人に由来している。

さらにはライバル芦屋、鼻だちが美しい早良京子など、数多くの魅力的なキャラクターが登場。
「非日常」の部分を抜きにしても、愛と友情と激情(?)がストレートに絡み合う青春ドラマとして、十分に楽しめます。

■映画化も

この「鴨川ホルモー」、映画化もされています。
主人公の安倍を演じるのは、怪優(?)山田孝之。
その相棒、高村を演じるのは、濱田岳。
ヒロインの凡ちゃんを演じるのは、栗山千明。

この配役を見ただけで、なんとなく世界観が分かるのではないでしょうか。
万城目ワールドにふさわしい、クセのある俳優陣ですね。

ドラマも映画も、クライマックスは、主人公安倍と宿敵芦屋(映画で演じるのは石田卓也)との対決です。
「ホルモーォォォ!」と叫ぶのはどちらか?
圧倒的な形勢不利のなか、安倍がとった作戦とは?

おふざけなドラマと思いながらも、意外に骨太なストーリー。
舞台となるのは千年の都・京都!
千年の歴史を持つ「ホルモー」が巻き起こす、若者たちとオニたちの狂乱絵巻!

文庫版40万部おめでとう、万城目さん!
これからも万城目ワールド、楽しみにしてます!

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知能指数高い文学女子たちの心理戦。4年前の女流作家の死は自殺か、それとも他殺か?直木賞作家、恩田陸さんのミステリー小説「木曜組曲」を読む。

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

本日の「夢中」は、ミステリー小説「木曜組曲」です。

■直木賞受賞作家・恩田陸さん

作者は、先日、直木賞を受賞した恩田陸さん。今まさに旬な作家ですね。
恩田陸さんが直木賞を受賞した作品は「蜜蜂と遠雷」という、ピアノコンクールを舞台にした青春小説。

なんで、それを読まなかったのかと言われると、まずその頁数に尻込みしたことと、「ピアノ」と「青春」というキラキラしたワードに気後れしたことが理由です。
では、なんで「木曜組曲」なのかと言うと、その逆なんですが、ミステリーが好きだし、読みやすそうだったから。
結果的には、この選択は当たりだったと思います。

■木曜組曲

「木曜組曲」のあらすじは、ざっと次のようなもの。もちろんネタバレない範囲で。
女流作家の巨匠、重松時子が亡くなってから4年。
時子に縁の深い5人の女性が今年も「うぐいす館」に集まる。

そこに時子の小説の主人公を名乗る者から花束が届く。謎のメッセージとともに。
「皆様の罪を忘れないために、今日この場所に死者のための花を捧げます。」

そこから次第に、女性たちは互いに告白と告発を重ねていく。
はたして重松時子は自殺か、それとも他殺だったのか?

この小説、昔ながらのミステリーファンにはたまらない素材がたっぷり。
綺麗な女性、美味しい食事、旧びた洋館。そして毒…。

読んでいてなんか、ミステリーの女王アガサ・クリスティーを思い起こしました。
面白いのは登場人物がみな物書きであるところ。
容疑者は皆、知的な文学女子なんですよね。

花束をきっかけに、それぞれが、それぞれを疑う心理戦が始まりますが、文学女子だから、知能戦です。
「みんなに動機があったんじゃない?」
なんて言葉ももしかしたら策戦。
そして次第に明かされていく、文学女子たちのそれぞれの過去と心のキズ…。

名探偵も大活劇も出てきませんが、一つ一つの会話が、重松時子の死の謎を明らかにしていく、そのプロセスにいつの間にか引き込まれていきます。そして、たどり着いた時子の死の真相とは。。。

ぜひ、皆さんも、手にとって結末を楽しんでください。
直木賞作家、恩田陸さんの1999年の作品です。
日本のクリスティーの道もあった(?)かもしれませんが、その才能は、この後、さらに幅広い分野に弾け広がっていったのはご存知の通り。

■夜のピクニック

2004年刊行の「夜のピクニック」なんかは、私は小説より映画が先だったけど、あれもある意味、心理戦だったよね。

多部未華子ちゃん、可愛かったし。いい作品でした。

ということで、本日の「夢中」は、直木賞作家、恩田陸さんのミステリー小説「木曜組曲」を紹介させていただきました。

知能指数も心理度数も高い殺人事件の謎解きを楽しめる作品です。
「蜜蜂と遠雷」を未読の自分が言うのも説得力に欠けるのですが(苦笑)、恩田陸さんのエントリー作品として最適なのではないでしょうか。

直木賞受賞おめでとうございます、恩田陸さん!

■追加です。

この「木曜組曲」ですが、映画化されているようです。
読者の方から教えていただきました(ありがとう!)。

出演は、鈴木京香、原田美枝子、富田靖子、西田尚美、加藤登紀子ら。
豪華女優陣ですね。これは観てみたい!
2001年の上映作品です。

次はアカデミー賞作家?また楽しい作品をお願いします、恩田陸さん!

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猪八戒はなぜ天界のヒーローから三蔵法師の弟子となったのか?「悟浄出立」を読む。

本日の「夢中」は文庫本、万城目学の短編集「悟浄出立」です。

この短編集には、古代中国に素材をもとめた5つの短編が掲載されているのですが、今回はそのなかで、タイトルにもなっている「悟浄出立」をオススメします。

■西遊記のスピンオフ

「悟浄」とは、西遊記で皆さんご存知の沙悟浄のこと。カッパの妖怪ですね。
本作は、西遊記に万城目流の味付けを施した、スピンオフ・ストーリーのようなもの。

名(迷?)脇役の沙悟浄と猪八戒のやり取りを軸に短編が構成されています。

ここで描かれる沙悟浄は、考えてばかりいて行動が伴わない、うだつのあがらない妖怪です。
一方の猪八戒は、悟浄とは逆に、後先考えずに思うがままに行動してしまう、おっちょこちょいな妖怪。
なんか、昔のTVドラマ「西遊記」を思い出してしまいます。岸部シローさんもそうだし、西田敏行さんの猪八戒もイメージがぴったり。

■希代の名将、猪八戒

話しは、悟浄がとある噂に聞いた、「八戒は、頭脳明敏にして神通広大、その用兵の妙をして天界じゅうにその名を轟かせた、希代の名将である」という話しの真偽を本人に確かめるところから展開していきます。
詳細は差し控えますが、そこには、八戒の深い悩みと、それとは対照的な孫悟空の存在がありました。

おそらく八戒には予知能力があったのではないでしょうか。
「相手の動きを読みきる」という彼の戦術はまさに神がかった勝利をもたらします。
一方で、彼は、余計な戦いをせずに最短で敵の大将を討つ戦い方、結果さえ出せばよいという合理的な生き方に、無常を感じるようになりました。

八戒は自虐的に言います。
「過程を貶し、現実を愛さず、終着点にのみ唯一の価値を見出すようになった者に訪れる悲劇的な結末なんて、もはや約束されたようなものさ。」

すこく示唆に富んだ言葉だと思います。
結果だけ追い求めるひと、いっぱいいますもんね。道義的なものとか、人とのつながりとか、いろんなものを犠牲にして。
八戒はそんな天界に嫌気がさしたのかもしれません。

■孫悟空

物語の後段で、はじめて一行の先頭に立ったものの、どっちに行ったらいいか戸惑う悟浄に対して、八戒が言います。
「好きな道を行けよ、悟浄。少し遠回りしたって、また戻ればいいんだよ。」

「遠回り」は、八戒が天界にいた時にはありえない選択肢でした。
そんな彼を変えたのは、彼を叩きのめした孫悟空です。

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(写真ACより)

天界の完全な神々とはまったく異なる、「予知」できない戦いぶりに、やられはしたものの、これまで感じたことのない魅力、ワクワク感を感じたのかもしれません。

■アナザー・サイド・オブ・西遊記

弟分を叱咤しながら歩を進める孫悟空。
文句を言いながらも一行に従う八戒。
そして、八戒の新たな一面を知って、自身も新たな一歩を踏み出す悟浄。

西遊記って、単なる冒険活劇と思ってましたが、万城目ワールドでは、見え方がまるで変わります。
3人(匹)の成長譚としても楽しめますね!

次の作品、出ないかな。3人(匹)の活躍と成長をもっと見てみたい。そんな風に思う短編でした。
よろしくお願いします、万城目さん!

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根津と千晶はもちろん、魅力的な二人組たちがスキー場を疾走する。「逃げろ!」、組織に立ち向かえ!スキー場シリーズ3作目「雪煙チェイス」を読む。

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、東野圭吾「雪煙チェイス」(実業乃日本社)です。

■スキー場サスペンス第3弾

せっかくゆっくりできる正月三が日を利用して、気になっていた「雪煙チェイス」を手に取りました。

本作は、「白銀ジャック」、「疾風ロンド」に続くスキー場サスペンスの3作目。
折りしも、「疾風ロンド」が阿部寛主演で映画化されて、絶賛上映中!旬な小説ですね。

さて、読後の感想ですが、一言で表すならば、爽快!…だけど軽い、かな。

「爽快」さについては、前2作同様、スキー場を舞台とした、大活劇が展開されます。
特に本作は、文庫のオビに「逃げろ!!」とデカデカと書かれているとおり、
広大なスキー場で追いつ追われつの追走劇が繰り広げられます。

前2作でも活躍した、根津と千晶のコンビが今作でも活躍。
映画では、関ジャニの大倉忠義と、元AKBの大島優子が演じたキャラクターですね。

クライマックスとなる雪上ウエディングの実現のために、二人は奔走するものの、ふたたび里沢温泉スキー場は事件に巻き込まれて…。

最後は一気に読んでしまいました。
刻一刻と時間が迫るなかで、小説だと分かりながらも、つい感情移入してしまいます。

この辺は東野圭吾さんのオハコですね。今回もやられました。

■前2作と比べて…

さて、「軽い」のほうですが、前2作と比べると、スキー場を舞台にした壮大な仕掛けが欠けているように思います。
逆に言うと、前2作のスケールがデカすぎたのかもしれません。

東野圭吾さんの作品って、重いテーマを持ったどっしりしたものと、エンターテイメント性の高いものと、両極あると思います。
本作は後者。重要キャラである脇坂と波川のコミカルなやり取りも相まって、娯楽性が高く仕上がっています。

一方で、コアとなる事件や謎解きに物足りなさを感じるのは私だけではないでしょう。あえてスキー場じゃなくても…なんて思っちゃいまいました。

とはいえ、ここまで一気に読ませられたのには、ワケがあります。
本作は、すでに名前も出ていますが、何組かの魅力的な「コンビ」がイキイキと描かれています。
コンビですので、文章も基本的に会話が中心。テンポがいいんですよね。

■魅力的な「コンビ」

なかでも、「所轄」の刑事、小杉と白井のコンビがいい味を出します。
特に小杉は、頼りないところがありながらも、組織の不条理に立ち向かう正義感を持っています。本庁のエリート刑事・中条とは対照的に人情味もあって、好感度大ですね。
一方の白井は芯が無い(?)ながらも、悪いことができないお人よしキャラ。なぜか、ハライチ澤部をイメージしちゃいました。

脇坂と波川、長岡と葉月といったコンビも捨てがたいのですが、今作の(も?)最大のコンビは、根津と千晶でしょう。
今回、ふたりは、大きな転機をむかえます。
ストーリーのコアとなる追走劇のスピードとは相反するかのような、じれったい二人の仲ですが、千晶のある事情をきっかけとして…。

ということで、いろんな要素がたっぷり詰め込まれたエンターテイメント小説であることは間違いありません。
読み終えると、スキー場に行きたくなっちゃいます。
これも、スキー好きの東野圭吾さんの狙いかもしれませんね。

スキーへの愛情と、キャラクター(特にコンビ)への愛情が感じられる小説でした。
ありがとう、東野さん。ありがとう、魅力あふれる二人組たち!!

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真田丸ファンもむせび泣く、決して負けることのできない戦い。「とっぴんぱらりの風太郎」を読む。

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の「夢中」は、万城目学さんの「とっぴんぱらりの風太郎」です。

■プータロー忍者・風太郎

これは時代小説なのだろうか、ファンタジーなのだろうか。それともエンターテイメントなのでしょうか。

紙の本の長さにして752ページにも及ぶ超大作。だけど頁をめくる手が止まりません。
特に後半の「大阪夏の陣」はハラハラドキドキ。
そして訪れるラストには、思わず声を失いました…。

主人公「風太郎」(ぷうたろう)は、その名のとおり、職を失ったプータロー忍者。
忍者としての腕はそこそこながらも、世渡りが下手。何につけても要領が悪い。
そんな彼が、奇妙なひょうたんと出会ったことから、時代を動かす騒動に巻き込まれていくことになります。

作者のこれまでの代表作、「鴨川ホルモー」、「鹿男あをによし」、「偉大なるしゅららぼん」にも通ずる、奇想天外な万城目ワールド全開か!?

確かに、奇想天外な展開が待っているんだけど、この物語の肝はそこじゃない。
それ以上に、圧倒的に人間くさい、葛藤や愛情、勇気といったものが、心を突き刺します。

■そのとき、1人対10万人

なぜ、これまで逃げ続けてきた風太郎は、逃げ道の無い大阪城に向かったのか。
「そのとき、1人対10万人。」

信じてくれるもののため…。風太郎にとってはじめての「人間くさい」決断だったのではないでしょうか。
いつの間にか、必死に風太郎を応援する自分に気づきます。きっとみんな同じ思いを抱くはず。

彼を取り巻くのは、相棒の「黒弓」(とても要領がいい)、曲者の「蝉」、美形の忍者「常世」、謎のくの一「百市」など、いずれも一筋縄でいかない魅力的な登場人物たち。
「ひさご様」や「高台院」(ねね)などの実在の人物も登場します。
ちなみに、いまをときめく「真田丸」もちょっとだけ登場します。

そして、クライマックスとなる大阪夏の陣。風太郎の奮迅ぶりには、真田丸ファンもむせび泣くに違いありません。

魅力的な登場人物たちがつむぎ出す、奇想天外かつ人間くさい物語。
機会があればぜひ読んでほしいと思います。オススメです!

ちなみに、「とっぴんぱらりのぷう」というのはおとぎ話のむすびの言葉です。
それを思うと、「とっぴんぱらりの風太郎」って、とても深いタイトルだなと思いました。

お疲れ様。ありがとう、風太郎!

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