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館長のふゆきです。
今日の夢中は、徳川家康(19)泰平胎動の巻!家康の江戸開幕にかける強い覚悟と次代に残る不安の種…です。
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■あらすじ
天下分け目の戦い、関ヶ原に勝利した徳川家康。
慶長8年(1603年)2月、戦乱のない世をつくるという強い覚悟を持って、征夷大将軍に就任します。
江戸に幕府を開き、武士の棟梁として領地を与える形で全国の大名を統率。
「切り取り次第」の戦国の常識を根底からくつがえす泰平の国家づくりに着手します。
しかし、そうした徳川の天下をよく思わぬ者もいました。それは、元の天下人である豊臣方…。
大坂城にある淀殿はなお豊臣の天下を空想し、秀吉の遺児・秀頼への政権移行を目論みます。
一方の家康は、徳川・豊臣両家の和合のために、孫の千姫を秀頼に嫁がせますが…。
はたして家康の思いは届くのか。戦乱のない泰平の世は日ノ本に訪れるのか…。
■江戸の抱負
時代小説史に残る名著、山岡荘八「徳川家康」全26巻。
第19巻「泰平胎動の巻」では、関ヶ原を経て天下を掌握した徳川家康の江戸開幕が描かれます。
いよいよ天下人の座に就いた徳川家康。悲願である泰平の世実現に向けて、理想の国づくりに着手します。
その覚悟のほどを記した章があります。「江戸の抱負」と冠されたその章で、家康は遠く源氏の時代と今の時世を重ね合わせて、息子・秀忠に強い決意を説き諭します。
大納言(秀忠)、わしは公卿にはならぬ。征夷大将軍を請いうけて、頼朝公の故知を生かし、武将で泰平を築くつもりじゃ。
「すべてをあげて賭けてゆくぞ!」という父の言葉に秀忠は、家康が幕府を江戸に開くつもりであることに気づきます。
そして、ようやく自らの真意に辿り着いた息子を導くように、それが新しい時代へと遷り変わる「けじめ」であると話すのです。
昨日の政治は大坂だったが、明日からは江戸…そうせねば、戦って出世の出来る時代ではなく、どうして事なく領民を治め、どうして財政を豊かにするかの時代になった…と、諸侯努力の目標を変えてやらねば決して泰平の世にはならぬ。
■秀忠と秀頼
家康の泰平の世にかける覚悟は、鬼気迫るものがありますね。
それが、父・家康から子・秀忠への訓戒という形で示されるのも興味深い…。父子の会話の終わりに、家康は秀忠にこのように諭します。
よいかの、江戸は明日の鎌倉に変るのじゃ。そして、お許の肩には、遠からず二代将軍の重荷がかかる…その覚悟を胸にして江戸へ下られよ。
この対話に限らず、家康の子息(特に秀忠)教育には、一種突き放すような厳しさがあるのが特徴です。
それは、信長や秀吉と異なり自分一代で終わらせることなく、末代まで泰平の世を継いでいこうという決意のあらわれと思います。
家康の躾(しつけ)は己だけからではありません。それが常日頃から行き届くように、秀忠の周りには家康の薫陶を受けた家臣が配されます。
秀忠は、折に触れて父から訓戒を受けるだけでなく、日々の政治においては周囲の賢臣たちによって器を磨かれました。
(大坂城/写真ACより)
一方、対照的な育てられ方をしているのが豊臣秀頼。訓戒を授けるべき父・秀吉はこの世になし…。
厳しく諭すべき重臣もなく、秀頼の世がいずれ来ると妄想する淀殿の寵臣たちに囲まれ、大坂城という虚構の器のなかで甘やかされて育ちます。
この秀頼が、あろうことか、正室・千姫(家康の孫娘)の侍女に手を出し、はらませてしまいます。
あまりに対照的な秀忠と秀頼の成長ぶりに、豊臣麾下の片桐且元も不安に思うのですが…。やがて、その不安が現実のものとなります。
ようやく胎動した泰平の世への道。しかし、その道のりはなお難儀なものとなるのでした…。