4000人対20万人 絶体絶命の北京籠城戦を”生き延びろ” 松岡圭祐”黄砂の籠城”

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、一大歴史エンターテイメント、松岡圭祐「黄砂の籠城」です。


黄砂の籠城(上)

■義和団事件

4000人対20万人。絶体絶命の北京籠城55日。
窮地を救うべく勇躍したのは、柴五郎中佐率いる日本だった…。

「黄砂の籠城」。この小説は、実際にあった史実をもとにしています。
それは、1900年に北京で起きた義和団事件です。

名前は知ってはいるものの、どんな内容かは詳しく知りませんでした。

義和団事件とは、日清戦争後の海外列強による中国侵略に反発して、武装集団・義和団が外国人排斥をさけび武装蜂起した事件です。
義和団は、西太后率いる清軍とも結び、海外諸国の公使館が建ち並ぶ北京・東交民港を包囲しました。



■柴五郎

武装団による包囲は2ヶ月近くにも及びますが、危機的な籠城戦を主導したのは、日本人中佐の柴五郎という人物でした。


柴五郎中佐(Wikipediより)

初代駐日イギリス大使のサー・マクドナルドは公の場で以下のような声明を出しています。

「日本人こそ最高の勇気と不屈の闘志、類稀なる知性と行動力をしめした、素晴らしき英雄たちである。(中略)
とりわけ日本の指揮官だった柴五郎陸軍砲兵中佐の冷静沈着にして頭脳明晰なリーダーシップ、彼に率いられた日本の兵士たらの忠誠心と勇敢さ、礼儀正しさは特筆に価する。11カ国のなかで、日本は真の意味での規範であり筆頭であった。」

この声明ののち、日英同盟が締結されることになります。柴五郎は後に「タイムズ」でも報道され、西洋で広く知られた最初の日本人となります。

しかしながら、ほとんどの日本人は柴五郎を知らないのではないでしょうか。

■物語

「黄砂の籠城」は、柴五郎中佐の北京着任から、緊迫の籠城戦までを、彼に仕えた櫻井隆一伍長の目線から描きます。

櫻井の目からしても頼りなく見えた柴ですが、義和団との戦闘が始まるや、真の力を発揮していきます。
ときは明治維新から約30年後。会津出身の柴は、戊辰戦争の籠城戦で親兄弟を失っていました。
その悲劇を繰り返さないという強い決意なのか、柴は東交民港に残された4000人の命を守るべく奔走します。

柴の姿に感化された櫻井は、次第に「死ぬための戦い」から「生きるための戦い」に動かされるようになります。

物語の中盤で、柴が櫻井にかける言葉が印象的です。

「生き延びろ。そして誇りを忘れるな。自分のなかにある真実を、戦場から持ち帰れ」

陸軍で敗北したら潔く死ぬことを教わってきた櫻井にとっては衝撃的なひとこと。しかしながら、それはずっと上官から言われたいと願っていた言葉でした。

そして櫻井は、誰かを「生かすための戦い」に身を投じていくのです。


黄砂の籠城(下)

■松岡節

この小説は、史実に基づく籠城戦のあり様が物語の中核にあるのですが、そこに松岡圭祐氏ならではの味付けが施されています。

松岡圭祐さんといえば、「催眠」や「千里眼」、「万能鑑定士Q」などで知られるミステリー作家。


催眠 完全版

この「黄砂の籠城」にも、ミステリーの要素が散りばめられています。
櫻井の友人を死に至らしめた内通者は誰か。籠城戦のさなかで次々と不審な死をとげる軍医たち。そして謎の暗号が意味するものは何か?

さらに稀代のストーリーテラー松岡氏ならではの、人間ドラマも加わります。
戦闘のなかで育まれるほのかな恋心。櫻井の恋の行方は?反目を乗り越えて結ばれる兵士の絆は、意外な形で物語のクライマックスにつながっていきます。

そうした味付けが生きるのも、中核となる戦闘シーンが、史実に基づく迫力と、スリリングな展開に満ち溢れているから。
次々と襲い来る義和団兵士ら20万人。柴と櫻井は、絶体絶命の包囲網のなかで、4000人の命を守ることができるのか。
そして、海外列強が認めた日本人の勇気と誇りとは何か。

上下巻に分かれた大作ですが、寝る間も惜しんであっという間に読みきりました。こころ熱くなる傑作です!

ありがとう、松岡圭祐さん! ありがとう、柴五郎中佐!




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