秀吉軍15万対九戸城3千!それでも戦う理由とは?「冬を待つ城」

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、安部龍太郎著「冬を待つ城」です。

■あらすじ

小田原の北条氏を攻め滅ぼし、天下統一に突き進む豊臣秀吉。
その総仕上げとなるのが、奥州北端の九戸城でした。

「奥州仕置き」として秀吉が振り向けた兵力は、なんと15万
一方、九戸城を守るのは、わずか3千人

なぜ秀吉は奥州仕置きにこれほどの兵力を差し向けたのか…。
その背景には、来る朝鮮出兵の人足を奥州から徴発しようという、陰湿な目的がありました。

そんな人狩りを許すわけにはいかない…。
その真意を見抜いた城主・九戸政実は、一族兄弟とともに起死回生の策に打って出ます。

やがて明らかになっていく暗躍者たち。そして、奥州が戦わなければならない理由。
果たして、九戸兄弟は奥州の民を救うことができるのか

■新たな解釈

九戸政実の乱
歴史は、1591年に九戸政実が決起した戦を、豊臣政権に対する反乱とみなして、そう呼びます。

ただ、それは豊臣政権側から見た景色であり、奥州側から見たら全く異なる景色が広がります。
奥州の民からすれば、その戦は、豊臣政権の横暴に対する正当な防衛戦だったのではないか…。

安部龍太郎著「冬を待つ城」は、そんな大胆な解釈によって、九戸政実の戦いを再定義しています。
その背景にあるのは、太古から長く続く、中央による奥州への侵略の歴史です。


冬を待つ城

物語のなかで、九戸兄弟の末弟・政則が、その侵略にさらされてきた歴史を幻視する場面があります。
阿倍比羅夫、坂上田村麻呂、大和朝廷による奥州侵略、源頼朝による奥州藤原氏征伐…。
征服欲や見せしめ、あるいは人狩り…。奥州の民と大地は、幾度となく理不尽な侵略を受けてきました。

それはまさに、奥州に15万もの軍勢を送ろうとしている秀吉のやり方と同じだ。

政則はそれに気づき、戦う勇気を奮い起こします。
実は、この政則が物語の主人公。弱気な彼が、さまざまな経験を通して強く成長していく過程も物語の醍醐味の一つです。

■裏切り者は誰?

物語は、九戸兄弟の戦いを軸に進んでいきますが、暗躍者を探るミステリーの要素もあります。

物語のところどころで挿入される、怪しげな密書
九戸一族を貶めようとする裏切り者が存在することが、その中身から分かります。

やがて、九戸兄弟の命を狙う者があらわれ、九戸城内でも謎の事件が頻発します。
果たして、裏切り者は誰か。そして、密書の送り先は誰なのか…。

そして迎える物語最大のクライマックス。
九戸城を舞台にしての、15万対3千の大立ち回り。

我らには命を捨てても守り抜かねばならぬものがある。

九戸兄弟の決死の思いは、圧倒的な兵力差を覆すことができるのか。
そして、奥州人の誇りと意地、愛する家族たちを守り通すことができるのか。
奥州仕置きを新たな解釈で描き上げた歴史長編。終章まで目が離せません。

ありがとう、冬を待つ城! ありがとう、安部龍太郎さん!

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