平成の刑事コロンボはキュートなメガネ女子 "福家警部補の挨拶”

こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。

今日の夢中は、大倉崇裕著「福家警部補の挨拶」です。

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今回は、豊富なラインナップの中から、その紹介文に引かれて、大倉崇裕著「福家警部補の挨拶」を選んで読み始めました。

■福家警部補の挨拶

その紹介文がこちら(Amazonより)。

福家警部補は今日も徹夜で捜査する。
冒頭で犯人の視点から犯行の経緯を語り、その後捜査担当の福家警部補がいかにして事件の真相を手繰り寄せていくかを描く倒叙形式の本格ミステリ。
…刑事コロンボをこよなく愛する著者が渾身の力を注ぐ第一集。

紹介文から明らかなように、犯人が先に分かっている、おなじみの「刑事コロンボ」形式。今どきは「古畑任三郎」形式と言ったほうが分かるでしょうか。

本への愛ゆえに殺人も辞さない私設図書館長の献身「最後の一冊」、大手に乗っ取られる寸前の酒造会社社長が犯す矜恃の殺人「月の雫」など四編を収録。
福家警部補の観察力と推理が冴えわたります。


福家警部補の挨拶

■小柄なメガネ女子

なんと言っても最大の魅力は、主人公・福家警部補のキャラクター
見た目は決して捜査一課の刑事に見えない小柄なメガネ女子。

事件現場に駆けつけるものの、そのかわいらしい(?)風貌から刑事と見られず、なかなか中に入れてもらえない。
しかもカバンの中がゴチャゴチャなので警察手帳が見つからずにすったもんだ…というのが恒例。

「おいこら、ここは立ち入り禁止だ。あんたマスコミ関係者だろ」
「それにしても、あなたが刑事だとは。学生かと思いました」
「なんだか、調子が狂うな。あんた本当に警察官かい?」

それに対して、慣れたように福家警部補が応えます。

「よく言われます」

これがタイトルとなっている「福家警部補の挨拶」なのでしょうか。

ただ、そんなちょっとドジな挨拶シーンに反して、彼女が見せる観察力と推理力はピカイチ。
現場のちょっとした疑問を徹底的に洗っていきます。現場の検分、徹底した聞き込み…そしてそこから浮かび上がってくる事件の真相…。


(写真ACより)

自分の目と足で地道に材料を集めていく泥臭いスタイルは、刑事コロンボから続く、懐かしくも王道の捜査手法。
そして、そんな体育会系の捜査を進めるのが、刑事コロンボとは魔逆の可愛らしい女子。そのギャップになんとも愛嬌を感じてしまいます。

■オッカムの剃刀

そんな彼女の魅力をたっぷり味わえる作品が、収録作の一つ「オッカムの剃刀」です。

「オッカムの剃刀」とは、14世紀の神学者オッカムが提唱した「ある事柄を説明するためには、必要以上に多くの仮定するべきではない」という考え方。作品中の言葉を借りれば、「物事は単純に見ろ」ということです。
「剃刀」(かみそり)という言葉は、不要なものを切り落とすことを比喩しています。


(写真ACより)

大学の教室で、約300人の学生を前に、その「オッカムの剃刀」について講義しているのが、元科警研の講師・柳田嘉文
現役時は、科学捜査のエキスパートとして幾多の事件を解決に導いた伝説の人物です。

その柳田が、とある理由から同僚の准教授を殺害します。
そして、さすがは元科警研。警察の動きを読むかのように犯行を偽装します。

誰もが通り魔殺人を疑わない状況で、福家は現場に残された些細な遺留品と聞き込みから、柳田の犯行を疑います
少しずつ明かされていく殺人のプロセス。しかし相手は「犯罪学総論」を講義する、犯罪捜査のプロフェッショナル。

途中、二重三重のトリックの解明に頭を悩ます福家に対して、勝ち誇ったように柳田が突きつける言葉がなんとも憎憎しい。

「職務熱心なのもけっこうだが、基本を忘れてはいかんな。第一に証拠を集めること…動かぬ証拠だな」…(中略)
柳田は不適な笑みを浮かべた。
「キミの上司への報告は取りやめることにしよう。これもまた勉強だ。しっかりやりたまえ」

うーん、くやしい…。負けるな、福家!真実は、「オッカムの剃刀」のように、不要なものを取り除いた先にある。

今回は、「挨拶」として届けられた4篇を収録したシリーズ第一集。
さらに続編も刊行されています。平成の可愛らしい刑事コロンボ、福家警部補の次なる活躍を読みたくなる良作です。

ありがとう、福家警部補! 負けるな、メガネ女子!

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