こんにちは。夢中図書館へようこそ!
館長のふゆきです。
今日の夢中は、「歴史人」2021年9月号、「しくじり」の日本史です。
■歴史人
いつも歴史ファンにたまらない情報を届けてくれる「歴史人」。
2021年9月号の特集は、「しくじり」の日本史。70人の英雄に学ぶ「失敗」と「教訓」です。
なんて、心惹かれるタイトルなんでしょうか…。
「しくじり」の日本史。70人の英雄に学ぶ「失敗」と「教訓」。
実は、歴史を学ぶ大きな理由は、ここにあると思います。
いかに「しくじり」を起こさないか。どうすれば失敗を繰り返さないで済むのか。
現代に通じる教訓が、史実に刻まれているんですよね。
かつてない苦境に悩む現代日本に送るメッセージ。それが今回の「歴史人」の特集です。
■70人の英雄たち
今回の特集で「しくじり」を犯した英雄として名を連ねているのは、なんと70人。
はじめに、その英雄たちの顔ぶれを「歴史人」の章立てに沿って、ざっと見てみましょう。
まずは、「失敗と因縁の古代史」に登場するのはこちらの18人。
物部守屋、葛城円、山背大兄王、蘇我入鹿、大友皇子、長屋王、藤原浩嗣、橘奈良麻呂、藤原仲麻呂、阿弖流為、平城天皇、橘逸勢、菅原道真、伴義男、源高明、敦明親王、平将門、藤原隆家
続いて、「失敗と興亡の中世史」に名を連ねるのは11人。
平清盛、源頼朝、後鳥羽天皇、源義経、新田義貞、後醍醐天皇、足利直義、楠木正成、足利義教、足利持氏、世阿弥
そして、「失敗と敗北の戦国史」では、戦国武将がずらり17人。
足利義政、山名宗全、太田道灌、三好長慶、斎藤道三、大内義隆、今川義元、朝倉義景、松永久秀、武田勝頼、織田信長、明智光秀、足利義昭、柴田勝家、大友宗麟、北条氏政、石田三成
さらに、江戸時代に入って「欲望と失敗の江戸史」は9人。
淀君、徳川秀忠、徳川綱吉、田沼意次、水戸光圀、新井白石、水野忠邦、大塩平八郎、長谷川平蔵
最後に、「理想と失敗の幕末史」で挙げられるのは15人。
井伊直弼、吉田松陰、佐久間象山、坂本龍馬、徳川慶喜、岩倉具視、久坂玄瑞、松平容保、土方歳三、西郷隆盛、大久保利通、伊藤博文、山県有朋、板垣退助、渋沢栄一
そうそうたる顔ぶれですね…。知ってる人も知らない人もいますが。
中には、「しくじり」を犯したとは思えない英雄もいます。そうした人物もやらかしてるんですよねぇ…。
本誌では、それぞれの人物について、犯してしまった失敗の事例を挙げて、その原因や背景を考察しています。
■頼朝の失敗
70人それぞれ、失敗のエピソードがとても興味深いのですが、ぜんぶ紹介するわけにはいきません。
今回は、その中から、表紙のキャッチコピー「頼朝から信長、龍馬、慶喜まで!英雄70人に学ぶ「しくじり」の歴史と教訓」に注目して、4人の英雄にスポットライトを当てましょう。
まずは、源頼朝。言わずと知れた、鎌倉幕府の創設者、武家社会の礎を築いた英雄です。
冷静沈着で失敗のない印象のある頼朝ですが、実は、そうではない彼の一面がありました。
本誌の頼朝評は、「身内や家人への感謝・愛情を欠かさなかった」というもの。
13歳で父と兄を失い、20年余の配流生活を送った頼朝。その不遇の時代を支えた旧臣たちへの感謝と愛情が、彼のパーソナリティとなり行動原理となりました。
この感謝と愛情は、平家追討・鎌倉幕府の創設に至るパワーの源となるのですが、一方で忠臣を謀殺するという「失敗」につながります。
感謝と愛情は、裏切られたときには一転して強烈な怒りと憎しみに転じます。怒りにかられた頼朝は忠臣・上総広常を誤解から誅殺してしまいます。もしかしたら、弟・義経の謀殺も愛情の裏返しなのかも…。
さらには、身内への愛情のあまり、子供に甘々だった頼朝。
嫡子・義家は「お坊ちゃま気質がたたり」早々に将軍の地位を失い、後を継いだ実朝も武芸に秀でるところが無く非業の死をとげ、源氏将軍は3代で終わることになるのです…。
■信長のしくじり
続いて、織田信長。天下統一目前、本能寺の変で命を落としました。
彼の失敗は、本能寺にほぼ丸腰で泊まっていたこと。総兵力150の信長の寝所に、総兵力13,000の明智光秀軍が急襲しました。
本誌は、その理由の一つに、信長の「油断」を挙げています。
信長は、畿内一円を治めていた光秀によって周囲の安全が保たれているという安心感から、わずかな護衛のみで上洛しました。
まさか、その光秀が自らに弓を引くとは思いもしなかったのでしょうね…。
もう一つの理由が「焦慮」です。圧倒的なスピードで版図を拡大していた信長。
何かに憑りつかれたようにヒステリックに命令を下す姿は、家臣たちに謀反の火を芽生えさせました。
本誌は、「光秀がやらなければ、誰かが信長を討ち取った」と断じています…。
■龍馬と慶喜
そして、幕末の2人の英雄、坂本龍馬と徳川慶喜。
坂本龍馬の失敗は、命を落とした近江屋事件。当時、龍馬は、薩長同盟の仲介役を務めるなど、幕府の要注意人物としてマークされていました。
実際に、その前年に、龍馬は池田屋で幕府捕吏から襲撃されています。
にもかかわらず、市中の近江屋に無防備な状態で宿泊したのは、あまりに浅はか…。
本誌曰く、「自分の存在がそれほどまで危険視されていたとは思い至らなかったのだろう」。自由人・龍馬らしい失敗ですね…。
徳川慶喜は、大政奉還という奇手によって新体制で権威を保持することを目論みますが、薩摩藩らによって排除されます。
さらに、鳥羽・伏見の戦いでは、薩長を上回る兵力を擁しながら敗北。政治生命を失いました。
その背景には、慶喜の統率力不足があったと、本誌は指摘しています。
譜代大名をはじめとした幕府首脳部は面従腹背。信任を得ていた孝明天皇が崩御…。
孤立した慶喜は、鳥羽・伏見の戦いで謎の敵前逃亡を果たし、形勢は一気に新政府軍に傾いたのでした…。
他にも、英雄たちの失敗の武勇伝(?)がつらつらと書かれています。
どれもこれも歴史に刻まれた真実。そこから今に役立つ教訓を読み解くことが、私たち後世に生きる者の責務なのでしょう。
ありがとう、歴史人! ありがとう、「しくじり」の日本史。